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男前なんかじゃない!!2
091.ゴール。

 ゴールは見えない…。

 足を一生懸命動かしているけどゴールテープはまだ先………のはずだけど、なぜかカイリくんと仲谷くんが足を止めて、ぼくを見ていた。

 なんで!?もしかして、なんかトラブルで一緒に転んだとか!?

 ぼくは足を動かしながらも、2人の様子を見ているが、どちらも転んだ形跡はない。

 なら、ゴールしてからぼくを待っているのかな?と、考えていると、ゴールテープを持つ生徒は何やらオロオロして「早く、ゴールして下さい!」て、2人に叫ぶように声を上げているのが聞こえる。



 それで、おかしいと思わないほうが変だよね。

 ぼくもゴール手前で走るのを止め、2人を伺うように見つめると、無言で手を差し伸べられる…。

「???」

 訳がわからず、更に2人を見れば苦笑いのような表情…。

「ゴールは一緒に!」

「えっ?」

 仲谷くんの言葉にぼくは驚きの声を上げるけど、それより素早く手を取り繋いでしまう。そして、それはカイリくんも同じで…。

「やっぱり、お前しか会長はいないだろ?オレはそれを支える…まぁ、たまにはオレのほうが会長に見える時があるが、それは諦めろよ」

 ニヤリっと笑うカイリくんの言葉に唖然とするけど、2人に引きずられるようにゴールテープを切ると、ドッと今までにないくらいの歓声が上がる。



「おめでとう!結城会長!!」

「スゲー!こんな会長の決め方初めて見た!!」

「はっはは。なんだ結局、一乗寺は結城君の下っ端で治まるのか!アイツなんのために会長選出たんだよ!」

「仲谷はうるさい奴だと思っていたけど、なんだちゃんとしているじゃないかー」

 色々な声が聞こえるけど、どれもこの結果に不満はないようだ。

 そして、いつもは批判的声が多い、仲谷くんにもたくさんの拍手が送られて………それに照れ笑いしている姿が見えた。



 カイリくんがそっと側に寄って、「これから、学園の立て直し大変だぞ!」て、脅しまがいの声を掛けて背中を叩く。

 ぼくは「うん」と、頷くけど、きっとこの体育祭で学園は元に戻っていると言っていいと思う。

 スイちゃんがぼく等に拍手していて………思わず、『やったよ!』と口パクすると、その意味にきづいたスイちゃんは、嬉しそうに笑ってくれた。



 こうして、ぼくは次期会長に決まった。

 これから仲谷くんから引き継ぎをし、副会長になるスイちゃんと他の役員を決める。

 前回はスイちゃんにまかせっきりだったけど、今回は絶対生徒会に入れたいと思っている人がいる。

 そして、この学園に多大なる嵐をもたらした生徒にも何かしらの罰を………。

 本人を目の前にして、そんなことを考えているぼくを、もしかしてら、「酷い奴!」とののしるかも人もいるかも知れない、それでもけじめはけじめだから…。



 スイちゃんに駆けより抱きつけば、またしてもすごい歓声があがる。

 今回は喜びで抱きついているのだから、見逃してね、みんな。


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