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男前なんかじゃない!!2
090.再スタート。

 パァーーーン!!

 ぼく等がこんな会話をしていると、いつの間にかスタート音が響く。

 その合図とともにぼく等はそれぞれの組の応援をするけど、仲谷くんが一所懸命応援する姿が初々しくて、思わずカイリくんと目を合わせて笑ってしまった。



 第一走者の1年生は、先ほどと同じように団子状態で第二走者にバトンを渡す。

 今度は転ぶことがなく、第二走者にバトンが渡ったことにぼく等3人はホッとするけど、順位は1位赤組、2位青組、3位黄組。

 チッ!と、カイリくんの舌打ちが聞こえるけど、差はそれほどない2年生がどれほどの走りをするかにかかっている。

 青組は陸上短距離で全国に名を馳せている寛治くん。赤組選手をあっさり交わし、赤・黄組の差をどんどん広げていく。



「やっぱり、寛治くんはすごいなー」

 ぼくのこの感想にさすがにカイリくんや仲谷くんから「ずりー、青組に短距離のエースがいるなんて!」て、そろって声を上げるが、これはいわば、ぼくの足の遅さにリードを貰っているようなものだから…なんて、苦笑いを浮かべてみる。

 そうしているうちに第三走者、3年生。

 どの組の3年生も運動部で活躍していた人だ。しかし、夏場で運動部を引退しているため、この時期に全力で走るのに慣れてない。

 バトンを受け取り走る様は確かに早いが、この分だとこのままの位置でバトンがぼく等に渡りそう。



 ここで、改めて今の順位の発表!!

 1位は寛治くんの活躍でぼくの青組、2位はど根性とばかり頑張っている仲谷くんの赤組。そして、ドンケツながらも2位とは差はわずかなカイリくんの黄組。



 ドキドキッ!!

 ゆっくり迫るぼくの出番。心臓の音は最高潮に早いけど、なぜかな?とても楽しく感じる。

 一番手でバトンが渡るぼくは、ちょっと不敵に笑って見れば、カイリくんも仲谷くんも笑っているような気がした。



 最終走者としてスタートラインに立てば、少し遠くで来栖先輩が一所懸命走っているのが見える。

 バトンを受け取る際、「頑張れ!会長!!」と、来栖先輩の声が聞こえた。

 頷くよりも早く足を動かせば、さっきまで気にならなかった歓声が聞こえる。

 風を切る音で誰の声かわからないけど、「イケー!」とか、「頑張れ!」なんて、声援が聞こえて。



「「「わぁぁぁーーー!!抜かれるぅぅーーー!!」」」

 叫びとともにぼくはカイリくんに…次には仲谷くんにあっさり抜かれた………けど、それすらも『やっぱり』と、思うよりも嬉しくて。

 きっとぼくが会長になれなくても、あの2人のなら学園がより素晴らしくなるような気がする。

 ちょっと前の仲谷くんなら、そんなことは思わなかったけど、きっとこれから…大丈夫…そんな声が、ぼくの心の内からも聞こえるから…。


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