男前なんかじゃない!!2
089.変化。
アクシデントはあったものの、リレーが再開されることになり、リレー選手は配置につく。
ランナーの1年生達は、膝にバンソーコーを貼りつけ痛々しそうな様子だが、その表情は明るい。
そして、それは赤組の1年生も同じで………。さっきまでが、嘘のように楽しげな表情を浮かべていた。
その様子にぼくとカイリくんは首を傾げて眺めていたが、突然、スタートラインに立つ赤組一年生が、仲谷くんに向け声を上げる。
「仲谷先輩、俺、頑張るから!!」
その声に仲谷くんは、びっくりするとともにうっすらと涙を浮かべて力強く頷いていた。
30分の間に赤組ではどんなことがあったのだろう?
これは、ぼくばかりではなく赤組以外の人達の反応だ。
だってね、さっきまでの赤組と全然雰囲気が違うから…。
確かに、この最終種目で点を貰っても赤組の優勝はない。
そのことと仲谷くんの対応の悪さでだらけるだけだらけていた、赤組が今はどの組より活気づいていた。
「光輝ちゃん、がんばれ!」
「赤組の意地を見せてやれ!!」
「ビリなら、光輝ちゃんは女装で校内1周だよ!」
こんな声とともにさっきまで暗かった赤組にドッと笑いが起こる。
そして、いつもの仲谷くんならその言葉にむきになって怒るはずなのに………何でかな、今は笑顔で「馬鹿!そんなことできるか!」て、いつもの大声ながらも答えている。
普通に会話が成立している…。
そのことに驚くけど、それは当たり前のことだ。
これは赤組の意識が変わったというより、仲谷くんの何かが変わったと思っていいのかな?
ジッと仲谷くんを見つめていると、目が合う。
いつもより真剣で、どこか怯えているように瞳が揺れる仲谷くん。
手を見れば少し震えていて、それでも口を数度パクパクさせてから、話し始める。
「か、考えてみた…。今の赤組のこと…。1人じゃ、宗次郎の言いたいことまだ理解できなくて、須王にも聞いてみた。………まだ、はっきり理解はできないけど、おれのせいだということはわかって…『ごめん』って頭下げた」
「みんなに謝ったんだ…」
ぼくは仲谷くんの言葉にびっくりしたように呟くけど、それは隣にいるカイリくんも同様で、珍しく目を見開いていた。
「うん。…そしたら、なんかみんな「仕方がねーなー」って、笑ってくれて…。なぁー、宗次郎、何でかな…すんごくそれが嬉しかったんだ。団長になってから、みんなオレの話し全然聞いてくれなくて、イライラしていたのに…」
「人の話しを聞いてみるのも、いいもんだろ」
どこか実感がこもったカイリくんの言葉に仲谷くんが「うん!」と、即答したのが印象的だった。
[☆乙女に戻る][★男前に進む]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!