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男前なんかじゃない!!2
088.リラックス。

 青組のみんなが集まり………作戦会議というより、ぼくをリラックスさせようと、あれやこれや。

「結城、とりあえず、的屋君の怪我は擦り傷程度で支障はありません。それと、同じく走っていた赤・黄組の1年生も大丈夫のようですよ」

 この言葉にホッとすると、紙コップを恐る恐る差し出す生徒がいた。

「結城君、これ…良かったら飲んで。ボクの家で販売している緑茶なんだけど、リラックス効果があるんです」

「宗次郎様、良かったらこれも…」

 そう言って、可愛い子系の男の子が差し出したのは、バナナ。

 たしか、スポーツ選手とかも、途中で食べたりするんだよね。よし、ぼくも食べよう!!

 パクッ。

 受け取ったバナナを笑顔全開で食べていたら、なぜかみんなが固まった。

「いや…これは、思わぬ展開………」

「ギャップ萌えは、知っていたけど…えっと、何ていうかこれって絵的にまずいんじゃ…」

 何かみんなが話しているけど、モグモグッゴクンッと、飲み込めば…数名の生徒がなぜか走り去ってしまう…。



「ねぇー、スイちゃん、どうしたんだろ?」

「結城、悪いですが皆さんの精神状態と私の嫉妬回避のために、今すぐバナナを食べるのは止めて下さい」

「はっはい!!」

 なぜかスイちゃんのこめかみに怒りマークが発生していた。

 ぼくは恐ろしさのあまりバナナを近場にいた生徒に押し付けたけど、なんで、スイちゃんは怒っているのかはなぞ!?

 リラックスをしているはずなのに…なぜか緊張状態に戻されたようです。

 隣にいた寛治くんが、リラックスも必要だけど適度の緊張も必要だから、結果オーライです!なんて、いたくスイちゃんを凄い人だと褒めていたけど、何となく釈然としないのは、ぼくだけかな〜?



 そんなこんなでぼくのいる青組はのほほぉ〜んとしているけど、それはカイリくんの黄組も同じようだ。

 しかし、一つだけ騒然としている組があって………赤組、仲谷くんのところ。

 遠目からは良くわからないけど、ざわついているのがわかる。

 リレー前まで、仲谷くんの怒声しか聞こえてなかったからちょっと不思議。

 これが良いことなのか悪いことなのかは、今のぼくは判断できないけど、風紀が動いていないところをみると、きっと事態が好転しているのだろうと信じるしかない。



 なぜかな?いつもは、キリキリ胃の痛い思いをして仲谷くんのことが嫌いだったはずなのに応援したくなった。

 きっと、さっきぼくがビンタして怒った時に見た、仲谷くんの途方にくれたような泣きそうな顔が忘れられないからだ。



『そんなこと、誰もおれに言わなかった…』



 仲谷くんが言った言葉…。

 あの時は、仲谷くんがいつも人の話を聞かないから!っと、思っていたけど、冷静に考えれば、それはちょっとおかしいよね。

 両親とかに一度も注意されたことがなかったような発言。

 今は無理でも、小さい頃友人と一度も喧嘩をしたことがなかったような発言…。

 この時、仲谷くんを構っていた各委員会の委員長や部活動の部長が「弟のようでほっとけない…」と、言っていたのを思い出していた。

 確かに…これでは、ほっとけないかも…。

 知らず知らず笑みを浮かべていたら、スイちゃんが不思議そうな顔をしてぼくを見ていた。


 スイちゃん、もしかしたら、ぼく、仲谷くんと友達になりたいかも?………こんな発言がのど元まで出かかったけど、それは、体育祭が終わってから…ね。


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