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男前なんかじゃない!!2
086.カイリくんに挑戦状。

 各リレー選手が持ち場に着く。

 四ツ谷学園のグラウンドは1週400m。1〜3年生はその半週の200m。そして、団長は1週の400m。

 短距離勝負なので、結果はすぐに出る。

 大きく息を吸うと、カイリくんと目が合う。どこか楽しげ、それでもどこか真剣な顔…。

 ぼく、本当にカイリくんと勝負しているんだ…。

 当たり前のことなのに、なぜかワクワクする。

 さっきまで、緊張でドキドキしていた心臓が、なぜかそれとは別物のように脈打つ。

 カイリくんに勝つなんて…そんなのは無理だ。これは1年前のぼく…。

 でも、今なら「カイリくんに勝ちたい!!」ちゃんとそう言える自分がいる。そのことに驚くより先に誇らしい気分になる。



「カイリくん、ぼく負けない!」

 自然と口から出た言葉。

 カイリくんは、ぼくの言葉に驚くより、それを当然と受け止めて「やれるもんならやってみろ!」と、笑顔で返してくれた。

 ぼく等と同じ最終ランナーの仲谷くんがうしろで、なんかギャーギャー騒いでいた感じがするけど、ぼくはカイリくんに大きく頷き、第一走者に立つ的屋くんに声援を送る。



 カイリくんと真剣勝負………絶対負けないから!!



 第一走者の1年生達は、初めての体育祭の締めを任されたとあり、緊張を隠しきれない。

 スタートラインに立つ姿に初々しさがあり、走りに自信がある的屋くんでさえ、表情を硬くしていた。

 パァーーーン!!

 スタート合図とともに3人が一斉に走り出す。

 スタートダッシュは、各選手上々。しかし、カーブに入ると団子状態になり…。

「「「あっ!!」」」

 誰もが一斉に叫びのような声を上げる。その先には、3人が折り重なるように転ぶ姿が見えた。

 誰かが足をかけたとか、妨害工作をしたと言う訳じゃなく、団子状態になったままカーブに差し掛かりもつれ合った結果が、転ぶと言う結果になったのだが、さすがにぼく等団長陣も顔を青くする。



 この状態に保険医の先生が救護テントから飛び出し、すぐさまその場に駆け寄ろうとするが、3人とも弱弱しくも起き上がり、残りの距離を走り出そうとする。

「ま、的場くん!!しっかり!頑張れ!!」

「武井!根性見せろ!」

 ぼくとカイリくんは、その姿にほっとするものの声援は忘れない。

 的屋くんより黄組の1年生、武井くんの怪我がひどく感じるけど、一所懸命走っている。

 そして、その前には赤組の1年生が走っているんだけど………こっちは何だか、仲谷くんの言葉に半泣き状態だ。

「この馬鹿!なんで、そんなところで転ぶんだよ!!さっさと走れ、グズ!!」

 ………さすがのぼくも、これには怒りを覚えました。

 わざと転んだ訳ではないのは、誰の目からも明らか…。

 風紀が仲谷くんに駆け寄ってくる姿が見えるが、それより早くぼくは行動を起こす。


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