うさぎの初恋 ◇13.シュリ。 名前も『シュリ』としか聞いてなくて、てか、ぼくも自分のことを『うさ』としか言わなかったからお互いさまかも知れないけど、それでもいつか出会えるとなぜか確信めいた予感はしていた。 でも、1年、2年と過ぎるうちにどこか諦めていた人…。それが、今目の前にいる。 S組ということは、金持ち組。ぼくの家の近所には豪邸はないはずで、シュリが近所の子ではなかったということだ。 当時小学1年生のぼくには、近所以外を捜すことはできなかったので、いくら見つけようと思っても見つからないのは当然だ。 「それじゃ、朱里、ウサギ山の件、よろしくね〜♪」 食堂で別れる時、ニコニコ満面な笑みを浮かべそう言うと、朱里は苦笑いして僕の頭を撫でる。 本当は朱里を呼び捨てにするのは良くない!と、雄介に言われたが、幼馴染設定になっているため(←どうしてそうなったんだろう?)、長耳先輩は大丈夫というお墨付きをもらい、そう呼ぶことにする。 朱里も朱里の親衛隊にそのように説明するということで、ぼくは晴れていじめの対象にはならないようだ。 ちなみに、ぼくの手にいつの間にかあったウサギ玩具は、朱里の物だったようだ。 良く考えれば、玩具が独りでにぼくのところに来る訳がない。 以前から雄介に言われていたことだが、ぼくはどうやらウサギ玩具を見ると暴走傾向があるらしい…。結果様々なことを引き起こし、雄介を巻き込みながらことを大きくするようだ。 フムー。と、いうことは、今日の食堂の件もぼくのせいなのか?←うさぎよ、気付くの遅すぎ…。 ま、『ウサウサシリーズ』コンプリート達成したから、結果オーライということで〜♪ ◇◆【視点なし】◆◇ 「あのー、副会長」 「草間君、これからのことを思うと他人事とは思えないから、良かったら私のことを名前で呼んで下さい」 「はい、それでは、立川先輩。もしかして、会長、うさぎに惚れました?」 「朱里の初恋はうさぎ君だからね…それから、ずっとだし…惚れ歴は長いよ」 この言葉に思わず、ため息が出たのは雄介。 「一言言いますけど、うさぎはウサギが一番で、きっとウサギがないと会長は眼中にないと思います…」 雄介の言葉に長耳はぎょっとするが、それも一瞬。 「それなら、全く問題ないよ。朱里はああ見えて、野ウサギ問題を抱えている山を持っているし、玩具付きお菓子メーカーにゲーム会社、ありとあらゆる方面のウサギと付くものを一手に口を出せるTOMIYAMAの玩具メーカーの経営も手伝っている。あと、確かウサギの慈善団体の名誉会長職なんてのも持っていたと思うよ」 それこそそれでも足りないなら、朱里の実家や朱里の力でどうとでも、ウサギ関連のものを引っ張り出せる。 そう長耳が話すが……どう見ても、うさぎの尻に引かれる朱里の未来図が簡単に想像できる2人。 「でも、会長がうさぎにアタックすることになったら………」 「草間君、それは言わないほうがいいよ…。兎三山…名の如く、ウサギの山を三つくらい超えないと、うさぎ君に恋心は伝わらないだろうね…」 2人はこの言葉でため息をそろえて吐くが、それは、これからどちらも、このことが原因で色々巻き込まれるであろうっと、確信的に予想できたからだ。 2人の願いは1つ…。一刻も早く、朱里の恋心がうさぎに届くことだ。 『今晩から、月にいるウサギにでも祈ってから眠ることにしよう!』 そう、2人が心に誓ったかどうかは、月にいるウサギだけが知っている。 ◇◆◇◆◇ 第1羽『うざきとうさぎ』 END [*の後退] [戻る] |