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うさぎの初恋
◇10.月のウサギ達。

 人間死にそうな目に会うと、些細なことは寛大になれる………と、いうのは嘘だと思う。

 会長に首を持って行かれそうになったぼくは、確かに月でダンスを踊るたくさんのウサギ達に出逢った気がする。

 あれがウサギの世界ならば迷わず突進するが、現世の世界にもまだ愛すべきウサギ達がいるので、その世界に行くのはしばらく遠慮したい。

 元々、怒るっという感情は昔から苦手だ。と、いうか、ウサギに対して怒ることはなく、怒るっという感情は、ぼくにあまり存在しない。

 本当は会長に対しても怒りは持続することはないが、あの仕打ちは酷いと思う。



「『シュリ』!!その時の子は『シュリ』って、言います!」



 ぼくがこの台詞を言った瞬間、会長に昇天させられそうになった…。と、いうことはこれにヒントがあるのかな?

 『シュリ』………あれ?さっき、その名が出たような?

 昼食を食べている段階で誰かに聞くには失礼だが、ここにはぼくの親友の雄介がいる。なので遠慮なく、雄介に小声で聞いて見ることにする。

「雄介、会長と副会長の名前、このナプキンに書いてみて」

 突然のぼくのこんな台詞に慌てる素振りをみせず、雄介は紺のブレザーからペンを取り出しナプキンに達筆な文字で書き始める。

 【会長、兎三山朱里。副会長、立川長耳】

 ほほぉーーー。会長は、ウサギの山を三つ持っていて。副会長は長い耳、ウサギだ!←違う!!



「雄介!会長すごいね、ウサギの山を持ってて!!副会長は、長い耳のウサギさんだよ!!」

 ついつい興奮しすぎて、雄介に小声で話すつもりが大きな声になってしまった。

 この瞬間、みんなの昼食を食べる箸が止まる。←凍りついたともいう。



 沈黙を破るのは、ぼくの務め………ではないが、確認せずにはいられないことがある。

「会長!!会長はウサギの山を持っているんですか?」

 自分でもわかるくらい目が輝いている気がする。

 さっきまで、会長に冷たい視線を向け怒りを表していたことを忘れ、熱弁するぼくに声を掛けたのは、会長ではなく、副会長。

「はっはは。私は長い耳でウサギなのかい?」

「はい!これからは、『ウサギ』仲間として、『君』付け不要で、『うさぎ』と気軽に読んで下さい」

「私は君付けが癖だから仕方がないけど、うさぎ君は私をウサギ仲間として『長耳』と呼んで下さい」

「はい!それじゃ、遠慮なく―――」

「うさぎ!!ちゃんと、先輩には『先輩』と付けようね〜!」

 長耳…先輩との会話に雄介の邪魔が入る。………雄介の目がなぜか怖い。

 雄介の妙な迫力にちゃんと『先輩』と付けることにする。



 と、ここでポツリッと呟くような小さな声を発見!!

「野ウサギが異常発生している、山はある…な…」

 ぎゃに゛ぃ〜〜〜!!(訳…なに〜〜〜!!)なんて、楽しそうな山なんだ!!誰だ今の声はっ!!

 くるりっと見回して会長の声と確認!!

「会長!!ぼく行きたいです!ぼく好きなんです(ウサギが)!連れて行って下さい!!」

 ぼくの言葉になぜかみるみる顔を赤くする会長。風邪かな?

 すると、長耳先輩がスルッと会話に入ってくる。

「えっと、うさぎ君、主語をちゃんと言おうね。ウサギが好きだと」

「???」

 何かさっきぼく間違えたこと言った?

 一応、雄介に説明を求めようと見るが、こちらはいつものポーズ…………頭を抱えている雄介がいた。


[*の後退]の前進*]

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あきゅろす。
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