うさぎの初恋 ◇05.ウサギ玩具。 「うさぎ!!」 手の中のウサギ玩具に頬ずりしていれば、どこからか雄介の慌てた声が聞こえる。どうしたんだろ? いや、それよりも、このウサギ玩具を雄介にも見せねば!! 俺はそれまで頬ずりしていたウサギ玩具を手に握りしめ、雄介のところに行こうと周りを見て見る………………て、ここどこ?そして、この美形な間抜け面している2人は誰??? お互い目をこれでもかというくらい見開いていると、ぼくの正面にいる人とバッチリ目が合う。 「「………」」 お互い無言………。しかし、その美形な人はしっかり、ぼくのウサギ玩具を見つめているのを確信できた。←ちなみに、うさぎの持っているウサギ玩具は、けしてうさぎの物ではない! 「これは、ダメだから!!これは、ぼくのモノだからね!!」 ぼくはそう宣言し、ウサギ玩具を自分の背に隠す。 ぼくの前にいる人は、ぼくの言葉に確実に怒りを表しているようだ。 ここで、負けてなるものか!!これは、ぼくのだからね!! 「「………」」 ここで、またしても無言の戦いに突入するはずが、背後から来た人物により、それも崩される。 「この!!馬鹿うさぎ!!」ゴツッッッン!! 「うぎゃ〜〜〜〜!!」 ぼくの親友である、雄介………なぜにぼくに拳骨を!!思わず、ぼくは情けない声を上げるが、それと同時に食堂が騒がしくなる。 「きゃ〜〜〜〜!!何、アノ生徒!!(怒)」 「今、朱里さまに抱きついたよ!!」 「朱里さまの知り合い!?」 「アンナ人見たことないよ!しかも、朱里さまは落ちこぼれ(普通科)に知り合いはいないはず!なにアイツーーー!!」 この言葉に続き、「アイツは制裁決定!!」とか、物騒な言葉も付け加えられている。 「へっ?」 雄介に拳骨されたことより、「制裁」の文字に驚く。 いくら進学校とはいえ人気者は存在していて、そして、それの付属品のように親衛隊も存在していたりする。 さすがに全国一と言っていいくらいの進学校なので、過激派はいないが、いや、まだぼくが見ていないだけで、噂くらいは聞いたことある。 オーソドックスないじめだけど…。 でも、それをぼくがされるというのは………靴入れにゴミ、机の落書き、菊の花、教科書やノートの落書き、クラス総無視………別にされてもいいかな? よし!別にウサギがいじめに会うとかの問題がないので、次の行動に移ろう! 「雄介、拳骨の件はとりあえず忘れてやる!そより見よこのウサギ玩具!!やっと手に入ったんだぁ〜〜〜!!」 いまだ食堂は騒がしいので、ぼくは声を張り上げ、うしろにいる雄介に振り向き満面の笑みでウサギ玩具を見せる。 あれ?なんか、雄介が顔に手をあてたまま疲れた表情をみせているけど、なんでだろう? [*の後退][の前進*] [戻る] |