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Is it free to pray even if it doesn't come true?
ここはどこ?

「…ちょっと待て。お前は道を知らないのにここに来たのか?」

『お前?名前教えたのに呼べないの?』

「あー分かったよ智尋サン!!」

何故名前しか知らない人とこんな言い合いしてるんだろう。
私は誰とも喋りたくなかったからバッティングセンターを出たはずだったのに。

「て、いうか……私だけ名前教えるの不公平じゃない?」

『何それ。素直に名前が知りたいです教えてくださいって言えよ』

はぁ!?!?!?
何このキツネ顔!!!!!!
何でちょっと片方の口角上がってるの!?
つい10分前くらいに会った人に、どうして私ここまで言われなきゃいけないの!?

「まぁ別に教えてやらないでもないけど?」

『いいです別に興味ありません』

「あんたが聞いたんだろ!?」

あんた!?
人の名前聞いといて名前を呼ばないなんて…!
私と彼とではだいぶ身長差があったけど
そんなことには物怖じせずに思いっきり睨みつけてやった。

『何度も言ってるけど…!!』

「あーはいはい智尋サンね、すいませんねお名前呼ばなくて」

言い方がむかつくって分からないのかしら!!!
もういい。諦めよう。
苛々してて忘れてたけどこの人、人の話聞かない人だった。

「…山口賢二」

『は?』

「だから山口賢二だっつってんだろ、俺の名前」

『あ、あぁ…だからヤマケンくん』

いきなり素直になるなぁこの人。
何でちょっと俯いてるの?
何でちょっと耳赤くなってるの?
えっもしかして…照れてるの!?

「つか、智尋サン駅の場所知りたいって言ってたよな」

『え、うん。教えてくれるの!?』

「何言ってんだよ俺も知らねーよ」

『知らな…えっ、は!?知らないって何どうやってここまで来たのよ!!』

「タクシー」

これだから金持ちは…!
何で自信たっぷりに言うのよ意味分からない。
理解しがたい。最早同じ人間か疑うレベル。

『じゃあ聞いても意味無いじゃない…そういうことはもっと早く言ってよね…』

「何で俺の交通手段言わなきゃいけねーんだよ、それこそ意味分かんねーし」

あぁもうだめだ話が通じない言葉が理解できない。
どうしよう………。
あっそうだ!電話すればいいんだ!
落ち着いてから連絡しなきゃってことばかり考えてたから、思いつくのに時間がかかってしまった。
私は携帯を開き、水谷さんに駅の場所を聞こうとした。

「何やってんの?」

『…水谷さんに駅の場所聞くの。聞いただけじゃ分かんないだろうけど、電話繋がったままだったら駅まで行けると思うし』

「待て、もしかして智尋サンて方向音痴?」

『うるさいわね!そうよ!』

いい加減この傍若無人さにも甚だ呆れてきた。
海明だからなんだ。
この人の態度が威圧的だからって物怖じなんてする必要ない。
そう思いながら、水谷さんが電話を取るのを待っていると突然私の耳元から携帯が無くなった。

『ちょっと!何するのよ返してよ!』

何故か傍若無人な人に取り上げられたのだ。私の携帯を。
もう本当に意味が分からない!!!

「送ってってやる」

『…は?』

「だからタクシー拾えばいいだけの話だろ?俺も帰りたかったし駅まで送ってってやるよ」

何でちょっと誇らしげに言ってるのよこの人は…!

『嫌よ!私タクシー代なんて出せるお金無いし!てゆーかただの高校生がタクシーなんて頻繁に乗るもんじゃありませんー!!』

わたしが憎らしげにそう言うと、当の本人は心外そうな顔をしていじっていたスマホを乱暴にポケットの中にしまった。

「ふざけんな!女なんかに金出させるかよかっこわりー!」

『…えっ、いやいやわたしそんなことしてもらうような義理無いし。そこまで迷惑かけられない』

「はぁ!?この後に及んで断るか普通!?智尋サンは黙って言うこと聞いてりゃいいんだよ」

そう言って、断りを入れてるわたしの発言なんかこれっぽっちも聞かないで通りかかったタクシーを停めてしまった。

きっと根はいい人なんだろうな、この人。
ちょっと…いや、かなり人の話は聞かないけども。
タクシーにだって「先に入れ」なんて言ってくれちゃったし、今日会ったばかりなのに同じ車内にいるなんて信じられない。

「デートですか?」

わたしが俯きながらタクシーに揺られていると、運転手さんがふいに口を開いた。

「2人共、学生さんでしょ?デートにタクシー使うなんて、今時の子は違うな〜!かっこいい彼氏さんだね!君、羨ましがられるでしょ!」

あ、やばい。饒舌なタイプの運転手だ…!
しかもデートじゃないし彼氏じゃないし!!!!
高校生の男女がいたらみんなカップルってわけじゃないのに!!!!!!!!

「そうなんですよ〜、こいつ学校でも俺が彼氏だと羨ましがられるって自慢してきて。優越感に浸ってるらしいですよ」

…!?はあぁああぁぁあ!?
何言ってんのこの人!?
あなたとわたしは今日初めて会ったんですけど!?

「あーやっぱり!いや〜羨ましいね〜ラブラブで!」

「いやいやそれほどでもないですよ」

『ちょっ…わたしこの人と付き合ってなんか、ふがっ!?』

言葉の途中で口を塞がれた。
と、同時に強い力で肩を寄せられる。

「…余計なこと言うんじゃねーよ、この俺に恥かかせる気か?」

やめて!小さい声で、しかも耳元で喋んないでよ…!

必死に振りほどこうとしても、力は緩まないし耳に顔が近くて恥ずかしいし何か色んな感情が混ざって、一気に涙が出そうになった。

「はい、着きましたよ〜」

運転手さんのその一言を皮切りに、自動で開いたドアから駅に向かって一目散に逃げた。

お金払わなくてごめんなさい!
いつか必ず返しますから!!!!!

そう心に思いながらヤマケンくんを乗せたタクシーを後にした。


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あきゅろす。
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