ジェラートは君の色
夏も中頃。イタリアの夏もなかなか厳しい。
照りつける直射日光を避けるようにベルとフランは裏通りの日陰を歩く。
「センパーイ、暑いですー。カエル外して良いですかー?」
茹だるような暑さにまずやられたのはフランであった。
それでなくとも黒いコートは熱を吸収しやすいのに、重いカエル帽子を被っているのである。本当に熱中症になりかねない。
(だけど、任務が終わったのだからもう良いだろうとカエルを外した途端ナイフが飛んできた。理不尽だ!)
フランはぺたりと地面に座り込む。
前を歩いていたベルは口をへの字にして振り返り、「ダメ」の一点張り。
「センパイのばーか。堕王子の馬鹿ー」
駄々をこねる子どものように動かなくなったフランにため息をつき、ベルは「そこで待ってろ」と言うと広場の方へ歩いていった。
やがて帰ってきたベルの手にはジェラートが二つ。
薄緑色だからメロン味だろうか。でもなんで二つ?
こてんと首を傾げて不思議そうな顔をするフランの口に、ベルはジェラートを突っ込んだ。
「それ食え。そしたら少しは涼しくなるだろ」
後輩を気遣ってくれた(のかもしれない)ので、フランはそれに甘えることにする。
「おいひーですー」
ジェラートを頬張りながら楽しげに笑うフランを見てベルも笑った。
密かにガキみてーと思いつつ。
「センパイありがとーございますー。で、カエル外して良いですか?」
「ダメだっつの」
「……前言撤回しますー。センパイうざいですー。殺っていいですかー?」
「……テメェな」
元気になった途端フランは憎まれ口を叩き、ベルもついナイフを取り出したのであった。
珍しく穏やかな夏の日のこと。
*ジェラートは君の色
(メロン味なのは、お前の髪色みたいだと思っただけ)
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