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I don't understand.

談話室。

特に用はなかったが、フランは時折何となく此処を訪れていた。
置かれた二脚のソファは座り心地が良いし、飲み物も備え付けてある。

だが、今日は先客がいたようだ。
座ろうかと思っていたソファに誰かが寝転んでいる。ならばもう片方に座ろうと近寄っていったフランは、先客が誰だか分かった途端嫌な顔をした。

堕王子ことベルだ。

幸いにも寝ているようなので、起こさないように足音と気配を消して方向転換する。

起こさないよう慎重に、慎重に。

向きを変えてから振り返っても……起きていない。

ならば大丈夫と一歩目を踏み出そうとしたら、いきなりカエルの被り物が外されて、頭に何かが乗せられた。
ぎょっとして手を伸ばそうとすれば、ずしりと肩にかかる重み。
振り返るまでもなく、視界の隅に映った金髪で、フランはベルが己の肩に顎を乗せたのだと分かった。

起こしてしまったらしい。

密かに舌打ちしてフランは声を掛けた。
「センパーイ、何してるんですかー?」
「カエル帽子外してやったんだけど」
「いきなり何のつもりですかー?」
怪訝そうな顔をするフランへの返事の代わりに、しし、と彼独特の低い笑い声。肩に顎を乗せられているせいでフランのを頭に振動が伝わる。
擽ったくて身を捩ったが、ベルはだらりとフランに寄りかかったまま離れようとしない。

フランはベルから離れるのを諦めて口を開いた。
「何を乗せたんですかー?外して下さいよーまったく」
「王子のティアラ乗っけただけだし。別にいいじゃん」
「意味わかんねーよ堕王子」
何故カエル帽子の代わりがティアラなのか。そもそもカエル帽子を外すなんてどんな災害の前触れか。
フランがベルの意図を計りかねている内に、ベルはちゃっかりフランの腰に腕を回した。
それに気づいたフランが抗議しようとした瞬間、思いきり腕に込められた力。
腰、というか腹を締め付けられて、ゲロッと間抜けな声が出た。

ベルはそのままフランを引っ張って共にソファに倒れ込む。
フランは仰向けにソファに沈んだが、ベルはちゃっかり自分だけ抜け出した。

何しやがる、この堕王子め。
内心でベルを罵ったフランは次の瞬間、眼前いっぱいにベルの顔を見る。
――唇を、ふわりと何かが掠めていった。


…………え、?


のし掛かられて起き上がれないでいるフランの耳元で、ベルは小さく笑って囁いた。「オマエは王子の物だってことだよ。カエルでもそんくらい分かるだろ」


……気がつけばベルはひらひらと手を振りながら歩き去っていた。我に返ったフランは無意識に詰めていた息を吐き出す。

自分はただ談話室に来ただけだったのに、堕王子のせいで色々頭が混乱してきたではないか。
本当に、ベルの唐突な行動は毎回理解ができない。
王子の物っていったい何なんだ。

「……意味、わかんないですー……」


*I can't understand.


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