短編 【9】 いっそのこと、唯からかけてくれたらいいのに。 そんな、都合のいいことを考えながら、時間だけが過ぎていく。 気がつけば、外は暗くて。 何度も問い合わせをしてみたけど、唯からはメールの一通も届いていなかった。 「・・・当たり前か・・・」 自分でまいた種なのに。 唯の隣にはまたあいつがいるのかと思うと、また醜い感情が湧きあがる。 ・・・これで、いいのかも・・・。 どうせ、今唯と話しても、また同じようなことを言ってしまうに違いない。 それでも携帯は手放せなくて。 スエットのポケットに入れて、トイレに向かった。 ふと携帯を見ると夜も10時を回っていて、ものすごく無駄な時間を過ごした気がする。 「・・・はぁ・・・」 無意識に、また溜息が洩れるのも気にせずに、また携帯をポケットに入れた。 ・・・はずだった。 ---ポチャン・・・ 「・・・は?」 聞こえるはずのない音が、背後から聞こえて思わず間抜けな声が出た。 ふと、振り返ると「・・・マジかよ。」 ポケットに入れたつもりの携帯が、便器に沈んでいる。 「・・・マジかよー・・・」 流したあとでよかったと思うべきなのか、今日は厄日だ、なんて思いながらびしょ濡れの携帯を拾い上げた。 そして開いて見るも、真っ暗な液晶画面。 「うそだろ・・・!?」 いくら押しても灯を取り戻さない画面に焦りが募る。 こんな時間に携帯ショップもやってない。 「明日まで・・・待つしかないか・・・」 [*前へ][次へ#] [戻る] |