短編 【17】 「でも、もういいや。満足した!」 「・・・ごめんな?俺、やっぱ唯が好きだわ。」 「・・・だからいいって!スッキリしたし、それに・・・唯さんより先に潤くんにキスしちゃったから。それでいいことにしてあげる!」 あ・・・そうだった。 不可抗力とはいえ、唯とする前に、他の女の子とキス・・・。 「もう!ほんっと潤くん、唯さんのことになると考えてることが顔に出すぎ!・・・大丈夫だよ、唯さんには内緒にしといてあげるから。」 そう言って、立てた人差し指を口にあてると、「じゃあね」と、小さな嵐を巻き起こした張本人は、小走りで身を翻して去って行った。 「・・・はぁ」 (一体何だったんだ・・・) 小さくなっていく背中を見送りながら、1つ小さく溜息を吐いたとき、今まで気づかなかった視線に、ゆっくりと顔を向けた。 「!!ゆ・・い、ちゃん!?」 ちょうど俺から見た正面の端に、こちらを睨むように見ている唯と目が合った。 ・・・いつから、いた? 俺としたことが、こんな正面にいたのに気づかなかった。 ・・・てか、なんか怒ってる? 「唯?」 恐る恐る、声をかける。 「・・・荷物、持って来たんだけど。」 そう言いながら、俺の鞄を差し出す唯。 そうだった!灯ちゃんを捜しに行くときに、唯に預けてたんだった・・・。 [*前へ][次へ#] [戻る] |