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机
最近苗字が生徒会室にあまり来なくなった。
来なきゃいけないことはないが、生徒会の奴等はよくここに入り浸るし、特に苗字は毎日と言っていい程来ていたのだ。
そして、苗字が、笑わなくなった――
いつも明るくて、いつもニコニコしていた苗字。
まぁたまにしょげることはあったが、それでも切替が早い奴で、あまり暗いところを見たことがなかった。
そんな苗字に、俺も少なからず救われていたし、他の生徒会メンバーだって皆名前が好きで、苗字が笑うと、生徒会室の雰囲気もよくなっていた。
―苗字、忍足と付き合ってるらしいぜ―
それを聞いたのは今日の昼。
俺は昼は生徒会室にいることが多い。そこで一緒にいた、会計から聞いた。当たり前だが、苗字はいなかった。
―苗字が忍足と…?ありえねぇ―
確かに最近よく一緒にいるらしい……だが、付き合うってなると、もっと幸せそうになるもんじゃねぇのか。
あいつのことだから、彼氏なんて出来た日にゃ、花を撒き散らしながら歩いて笑うに違いない。想像したらなんともアホらしい絵面だが、きっとそう。あいつはそういう奴なんだ。
「…苗字……」
俺は今、生徒会室へ歩いていた。
部活が終わり、日も傾いている。
確信はないが、今日は苗字がいる、そんな気がしていた。
(苗字と会って、ちゃんと話さなきゃな――)
扉を開ける。
苗字がいた。
ほらな。俺の言った通り。
だが寝ているようだ。俺のデスクで。
「おい、何寝てやがる。しかもそこは俺の席…」
嫌な予感。
苗字は、泣いていた。
頬には涙の後。泣きつかれた顔。
胸がざわつく。
こいつは、なんで泣いてんだ…
誰だ、泣かせた奴は……
そしてこいつは、どんな思いで、俺の机で眠ったんだ――
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