. 屋上 私の席はちょうど真ん中あたりで、彼の席は窓際の一番後ろ。 授業中は、ずっと見張られてるみたいで、辛かった。 そして昼休み。 やっと生徒会室に行ける。 今の私にとっては生徒会室だけが、心の安らげる場所になりつつあった。 (早く、行こう…) 教室を出ていこうとした瞬間、彼とすれ違った。 「屋上」 「…え?」 すぐ通り過ぎようとしたが、その言葉が引っ掛かった。 (屋上に…来いってこと?) 「あの…でも、私、仕事が…」 ちゃんと、彼の目を見て言う。 すると彼はブレザーの右ポケットから携帯電話を取り出し、右手でパカパカと、それを閉じたり開いたりした。 (…脅されてる) 「わ…わかっ、た」 私がそう言うと、彼は携帯をしまい、満足そうに教室を出ていった。 ―― 屋上に来るのは初めてだ。 恐る恐る、扉を開ける。 (…あれ、誰もいない?) そっと扉を閉める。と、その時、誰かに後ろから抑えつけられた。 そして反転させられる……彼だ。 唇で唇を塞がれた。嫌だ…逃げたい…けど、背後には壁。顔の両側には腕。そして私の股の間には彼の右脚が入り込んでいて、全く身動きが取れない。 両手で抵抗するが、びくともしない。そしてあろうことか、彼に両手首を捕まれ、頭の上でクロスされ扉に抑え付けられる。 嫌だ、こんなのは…私の頬に涙が伝った。 「…その顔、ほんまゾクゾクするわ」 他はそのままだが、唇だけは解放された。彼が何を言っているのか分からない―― 「こっちや」 手首を引っ張られる。そしてちょうど建物同士の陰で、死角になっているのであろう所に連れられた――― 「もうええわ。ほら、さっさと拭きや。そしてはよ行き。仕事、あるんやろ?」 この男は、私がこんな状態で生徒会室になんて行けないことを知っていて、わざと言っている。 何がそんなに面白いのだろう…笑いながら、屋上を出て行った。 「…っ…ふぇっ…」 自分で自分の体を抱きしめる。私はそこから動けないまま、放課後まで泣いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |