. 飼い犬 これから、どうしよう… 上手く回らない頭。でも、とりあえず服は着なきゃいけない、と思った。 …手が奮えて、ボタンが掛けられない。 それがもどかしくて、さっき散々泣いたはずなのに、また涙が溢れてきた。 ―ここ、ええ場所やろ。鍵盗むの大変やったんやで?まぁ今は使われてへんし、鍵がなくなった所で誰も気付かんけど― ―鍵は開けといてやるわ。今日はもう帰ってもかまへんで。はは、俺優しいやろ。こないに優しい飼い主、他におらんで― ―明日学校休んだらあかんで?ま、分かっとるよな― やっとの思いで服を着て、立ち上がる。 よろよろする体で、扉を開けた―― ****** 「おーい、会議録できたか……って。あーん?」 おかしい。 いつもいるあいつがいない。 生徒会室は、水を打ったように静かだった。 こんなことは初めてだ。あいつは、確かに仕事は遅いしミスもする。だが生徒会室に来ない放課後はなかったし、仕事を途中で放り出すことも決してしなかった。どんなに遅くなっても残って終わらせていた。 まさかもう終わらせて帰ったのか?――と思い俺のデスクを見てみるが、それらしきものは置いていない。それに、俺に手渡さずに帰るわけがない。あいつはそんなに無責任じゃない。 何かあったのか…。 まぁいい。明日聞いてみるか。 [*前へ][次へ#] [戻る] |