. 仕置き 会長の家で身支度を整えて登校した。 そして私は生徒会室に向う。足取りは軽く、今日はいい日になりそうだな、と思った。 しかし、前から歩いてきたユニフォーム姿のあの男を見た瞬間、現実に引き戻された気がした。 「あ…」 逃げようかと思ったが、脚が震えて動けない。そもそも、もし逃げようものなら、何をされるか分からない。私の頭は恐怖で支配されていた。 「おはようさん」 「お、おはよう…」 私はいつも通り、彼の目を見て言った。この、心に反して眼球を動かす能力と、機嫌を取るための薄い笑いは、この男によって体に染み込まされていた。 私の挨拶に、彼はいつも通りの笑顔を浮かべる。 今日はいつもより少し機嫌が良いように感じた。 しかしそれは逆にとても恐ろしいことだと、その浅はかな自分の考えを呪ったのと、髪の毛を引っ張られたのはほぼ同時だった。 「っい、たい!」 彼は私をそのまま近くの植え込みに連れて行き、校舎の壁に押し付けた。 「なぁ?」 「…は、い」 身長差から、上から覗き込まれる体勢になる。 この男の影で視界は薄暗くなり、更に彼の後ろには植え込みがあるため、ここは本当に暗かった。 「昨日、どこ行ってたん?」 こわい…… 泣きたくなんかないのに、恐怖と、さっき髪を引っ張られた痛さで、目頭が熱くなる。 本当に泣きたくなんかないのだ。だってこいつは、私の泣き顔を喜ぶから。 「なんで泣くん?」 そう言って、私の顎に手を添えた。少し上を向かされた拍子に、左目から涙が一筋流れた。 「昨日はご主人様に内緒で、なんややましいことでもしてたんか?」 言い終わるのと同時に、スカートに手を入れられ、中に指を突っ込まれた。 「っ!!……ぃ…たいっ…」 中を乱暴に掻き回される。痛い、怖い。 「頭の悪い犬には、お仕置きせななぁ…」 指の動きは止めずに、逆の方の手で、私の首を掴んだ。 「っ、う…」 彼の手の力は段々強くなっていって、普通に首を締めてくる。 この男は私を殺す気なのだろうか。 苦しい――これはいつまで続くのだろう―― その時、一気に両手から解放された。 私は膝から崩れ落ち、首を押さえた。涙と咳が止まらなくて、嗚咽を繰り返す。 「今日、俺の家に来いや。来んかったら殺すで?」 頭の上から聞こえた声に顔を上げることは出来ず、霞む視界で、落ちる雫と土と草だけを見ていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |