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放課後
放課後。いつものように生徒会室へ行こうとしていた途中、同じクラスの忍足君に呼び止められた。

ちょっと話があんねん、

そう言った忍足君は歩き出した。

ここじゃ出来ない話なのかな?と思い、素直に忍足君の後ろをついていく。

その時自分が生徒会室に向かっていたせいか、忍足君の話はきっと、委員会の話だろうと思い込んでいた。

(確か忍足君て海外交流委員会だったな)

なんて呑気に考えていた。

そして、ずいぶん歩いた気がする。私は、今はあまり使われていない方の体育館倉庫近くまで連れてこられた。

「話って何?忍足君」

やっと歩みを止めた忍足君は、私の方を振り向き、倉庫の壁に背を預けた。

「…なぁ、なんで生徒会入ったん?」

「…へ?」

一瞬なんのことだろうとだか、思考が追いつかなかった。
私はまだ、本当になぜか、忍足君の話は委員会の話だと思い込んでいたから、脳が上手く切替られなかったんだと思う。

「…なんで生徒会に入った、か?うーんと…」

そう言われても、すぐには言葉が出てこなかった。

理由はあった。あの人がいたから。
入学式の日から感じていた何か。きっとこの人はすごいことをしちゃうんだろうという期待。それを、近くで見てみたい――きっとそんな気持ち。

でも要領の悪い私には生徒会なんて無理だろうと、今までは生徒会に入ろうとは思わなかった。

でも、2年の終わり。3年生になるという自覚が生まれた時、このままじゃ駄目だと思った。
今まで私は何をやっていたのだろう。近くで見るんじゃなかったのか、と。
卒業という二文字が色濃く結び付く最終学年。
勿体ないと思った。ここで生徒会に入らないと、私は絶対後悔する――そんなことを思い、私は生徒会委員に立候補した。

「う…んと、会長のせい、かな」

言ってちょっと恥ずかしかった。
会長のすごさは、生徒会に入って改めて実感させられた。
私の憧れの人。尊敬できる人。…あ、なんか早く会いたくなってきちゃった。


「……おもろない」

長い沈黙の後。面白くない――忍足君は確かにそう言った。

その瞬間、右腕に痛みが走った。
忍足君に強く掴まれたのだ。

痛い。その言葉さえ、あまりの驚きで声にならなかった。

あっという間に、体育館倉庫の中に押し込められた。

「…っいた!」

マットに投げつけられて、初めて声が出た。

扉を閉める忍足君。

様子がおかしい…そんな風に思うには、あまりに遅すぎた。

「…いやっ…!」

鍵を掛けた忍足君は、すぐさま私にのしかかってきた。馬乗りされ、両手首をマットに縫い付けられる。

「なんで自分が、こないな事されるか分かるか?」

わかんない…分かるはずない……
でもそう言っては駄目な雰囲気だということは、本能的に分かっていた。

必死に思いを巡らす。私、忍足君に何か悪い事したかな……だめだ、思い付かない。

「…なに黙っとんねん」

「…っ」

怖かった。忍足君の声が怖い。暗くて何も見えない。

私は泣き出してしまった。

すると、頬に有り得ない感触を感じた。

「いやっ…」

「なにがやねん。涙拭いたっただけやん」

不敵に笑った、と思う。
段々と目が慣れてきていた。

「…っごめ、んなさ――」

喉につっかえる言葉をどうにか押し出して、とりあえず、謝ろうとした瞬間。口を塞がれた。

強く吸われ、息をすることもままならず、唾液が口端を伝った。

「理由も分かってへんのに、謝んなや――」



そこからの記憶はひどく曖昧。

泣き叫ぶ私を無視し、彼は私を弄んだ。

制服は脱がされていた。
首に、胸に、お腹に、おぞましい感覚。


そして全てが終わった時、虚ろな私の脳に、シャッター音が聞こえた。



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あきゅろす。
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