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テニス短編
愛しい春のフール *跡部
「けーごぉ、」

愛しい人に呼ばれて振り返れば、真剣な顔をした彼女がじっと俺を見ていた。

「どうした?」

俺は優しく問い掛ける。

だが彼女は、少しそわそわとしていて、なかなか口を開かない。

少しの沈黙。見つめ合えば、ここが学校の渡り廊下だろうが、二人の世界になる。

「あ、あのね…」

意を決したように、彼女が口を開いた―――











「けーご、宇宙人見つけたって本当!?」



……



……………えーと、


「忍足君から聞いたんだよ!跡部財閥が、NAS○と一緒に、う、宇宙人見つけたって」

宇宙人、のとこだけ小声で、俺にしか聞こえないように話す名前。

周りに人なんかいねぇのに、ましてそんな話を信じる奴がいるかも分からねぇのに、内緒話をするように話す姿が愛らしい。


しかし忍足の野郎……俺の名前に何吹き込んでやがんだ。後で締め上げてやる―――




そうか、今日は


「わ、わたし、誰にも言わないからね!…あ、でも、ちょっと、ちょっとでいいから、その、宇宙人のこと分かったら、教えて欲しいな、なんて」

目を輝かせて、俺を見上げてくる名前。


さっきまでは、どうやってそれが間違いだと、今日があの日だということを教えてやろうか考えていたが、名前のそんな姿を見ていたら、それを否定するのが、とても悲しい事に思えてきた。

名前のがっかりする姿を見るのは、とても耐えられそうにない。




「あぁ、お安い御用だ」



気付けば俺はそう口走っていた。

ありがとう!と喜ぶ名前の顔を見ながら、俺もとことんこいつに甘いなと思った。





その後、跡部財閥が宇宙開発事業に乗り出すのは、そう遠くない未来―――


(名前のためならば、嘘も本当に変えてやる)

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あきゅろす。
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