仁王連載
仁王君と大晦日@
チュンチュン。チュンチュン。
鳥のさえずりで目が覚めた。
完全に覚醒していない目に映るのは、肌色。
肩にのしかかる暖かな重み。
暖房機器を何も付けていない部屋は寒いけど、この空間だけは天国みたいに心地良くて、あったかい。
(まさはる…ねてる…)
雅治はまだ眠っているみたい。
寝顔かわいいなぁ…かわいい…
初めて見た。雅治の寝顔。
(まさはる…すき)
もぞもぞと雅治に近付いて、雅治の胸におでこをぴたっとくっつける。
今、すごく甘えたい気分。そう思った瞬間、雅治と私の間がぎゅっと縮まった。
私の身体に回っていた腕が、私を強く抱きしめる。
「ふふ。雅治、起きてたの?」
幸せすぎて笑ってしまった。
顔を上げて雅治を見る。
「今起きた」
ちゅ。と私のおでこにキスをくれた。
**
大晦日にだけやる、お笑い番組のスペシャルがすごく好きで、私は毎年それを楽しみにしていた。
そう話したら雅治も毎年その番組を見るらしく、今年もその番組で年越ししようということになった。
「楽しみだねー」
「そうじゃな」
目の前にはお寿司。今日は贅沢をしようと思って、頼んでおいたのだ。
さっきお寿司屋さんが来たので私が出ようとしたら、雅治に止められた。
そして玄関へ変わりに行ってくれた。
なんでだろうと思っていたら、雅治がお金を払ってくれたことに気付いて慌てていると雅治に、「俺がおらん時は、出前は頼んじゃいかんぜよ」とか「宅配便も俺がいない時は受け取っちゃダメぜよ」とか、真剣に言われた。
心配しすぎだよ、って笑ったら、笑い事じゃないなり〜ってほっぺたをひっぱられた。
そんなこんなで、お味噌汁だけ作って、お夕飯。
もうすぐテレビが始まる。
始まったら食べようね、ってことにしているので、もう少しの我慢。
じっとお寿司とテレビを見比べていたら、横で雅治が笑ったのが分かった。
「ん?」
「っ…い…」
「い?」
「犬みたいじゃな」
雅治はそう言ってまた笑った。
顔に熱が集まる。
「い、犬じゃないよぉ!」
その時、テレビからオープニングの音楽が流れた。
−そんなに待ちきれないなら、あんなこと言わんだらええのに。
−だってぇ〜。
−ホントばかじゃの。
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