仁王連載
仁王君と思い出
近くのスーパーで今日の夕飯の分と、明日の分のお買い物を仁王君と一緒にした。
あ、雅治、と!
――
付き合ってしばらく、私は前までと同じように「仁王君」と呼んでいた。
なんだか仁王君って呼ぶのがしっくりきてたし、何より名前で呼ぶのが今更気恥ずかしくて呼べなかったからだ。
それが、この間のクリスマス。
初めて仁王君に抱かれた日。
仁王君はほんとに優しく私に触れて、大切にしてくれて、幸せだった。
私は何もかもが初めてだったから、仁王君にされるがままだった。
だけど、たったひとつだけ、仁王君が「名前で呼んで」と私にお願い事をするみたいに言った。
気持ち良さから自然に出てしまう声に混じって、まさはる、と必死に呼んでみたら、ありがとう、って言ってるような優しい顔で笑い掛けてくれた。
情事後。
クタクタな私。仁王君の腕の中、眠ってしまいそうな頭に聞こえたのは、
−これからも雅治って呼んでな−
という仁王君の甘い声だった……
―――
「だって…!恥ずかしいんだもんっ!」
買い物中、無意識で名前を呼んでいたことを散々いじられた。
その度に恥ずかしいって顔が熱くなっていた私。
だけど、ご飯食べてる時も雅治って呼んでーって言うから、なんだか可笑しくなってきちゃって、笑っちゃった。
そして、仕方ないから、がんばって、雅治、ってちゃんと呼ぶことにした。
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