仁王連載
雅治と丸井くん
トゥルルルル…トゥルルルル…
「…ん… 」
まどろみの向こう、何かが鳴っている。なんだろう…でん、わ…?
「…なんじゃぁ、うるさいのぉ…」
あの後、いつの間に眠ってしまっていたんだろう。私は雅治の腕の中で目を覚ました。
ぎゅぅぅ、とまだ半分寝ている雅治に強く抱きしめられる。
「まさはる、電話鳴ってる…」
「んー…無視じゃ…」
「そんなぁ、だめだよ」
私は側に置いてあった雅治の携帯を手に取る。雅治に渡そうとした時、ふとディスプレイの文字が目に入ってしまった。
まだ鳴っているそれには『丸井ブン太』と記されていた。
「丸井くん?って人だよ」
「ブン太か…全くうるさいのぉ…」
私が渡すとしぶしぶ受け取り、電話に出る雅治。
『おっやっと出た。出るの遅ぇーぞー仁王』
「なんじゃその言い草は。こんな朝早くに掛ける方が悪いんじゃ」
『はぁ?何言ってんだ。もう昼の1時だろぃ』
静かな部屋の中、会話を聞くのは悪いと思いつつ、電話口の元気な声は普通に聞こえてしまう。
と、私達は同時に部屋の壁時計に目をやった。ほんとだ、もう13時だ…!
こんな時間まで寝てしまったのか…私が雅治に口パクで『寝すぎたね』と慌てて言えば、雅治はフッと微笑んで頭を撫でてくれた。
雅治と丸井くんというお友達が喋っている間、私は雅治に髪の毛をくるくるっと弄ばれたり、ほっぺたをふにぃってされたり、うん、つまり遊ばれていた。
それだけならまだ良かったが、次の瞬間、雅治は私にキスしてきた。
「(ん!んんん…っ!)」
うっかり気を抜くと声が出てしまう。でもそんなことをしたら絶対電話口の丸井くんに聞こえてそまう。それは絶対にダメだ!
ようやく離してくれた雅治に、私はまた口パクで『聞こえるよ…!』と必死に訴えた。今の私はきっと、雅治のキスと恥ずかしさで真っ赤になっていると思う。
そんな私がよほど面白かったのか、雅治は声にならない声でケラケラと笑っていた。
そしてまた雅治は私の口を塞ぐ。雅治のキスは気持ちいいから、声を我慢するのは大変なのに…!しかし次の瞬間、こともあろうに雅治は私の乳首をむにゅっと摘まんだ。
「ひゃぅっ…!」
声が出てしまった。そりゃそうだよ、出るに決まってるよ、雅治のばかぁ〜〜〜!!
慌てて口を手で塞ぐ私に、雅治はまたケラケラと、ほんとに可笑しそうに笑っている。そんな雅治に私は、ばかばかぁ〜!!と雅治の胸板を叩いて無駄な抵抗をする。
『…ん?何か今聞こえたけど…仁王、他に誰かいるのか?』
「ん?さぁの…チュッ」
雅治がまたキスをした。でも今度はわざと音を立てて。
『あああ!!てめぇ彼女と一緒にいるんだろぃ!イチャイチャすんじゃねー!!』
丸井くんの声が聞こえる。
あぁ、もう恥ずかしくて死にそう…
私はベットに突っ伏し、早く電話が終わるのを待った。
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