仁王連載
雅治と玄関
ディカプリオは明らかに私の家の方向に向かっていなかった。
多分、雅治の家に向かっている。
なんだか、急にドキドキしてきた。
あのキスの後会話はなくなってしまって、気まずいわけではないのだけど、緊張が…
私は堪えられず、窓の外を見つめる。
久しぶりに見るこの街の明かり。
夜景がとても綺麗だ。
私に何も聞かず自分の家に向かっちゃうところが、強引だけど好き、なんて思っちゃう私は、相当雅治に溺れているんだろうか……
そして、雅治の家に到着した。
相変わらず、オシャレなマンション。
クリスマスイヴに初めて来て、今日で2回目だ。
ディカプリオの中からぼーっと眺めていたら、助手席のドアが開いた。
そこには優しい顔の雅治がいて、手を差し延べてくれている。
私はその手をそっと取った。
乗る時もドアを開けてくれるし、降りる時もいつもこんな感じ。
雅治、紳士。
雅治とデートすると、お姫様気分が味わえる。
雅治は後ろの席から私の荷物を出すと、ドアロックをする。
「お疲れ。ディカちゃん」
私がつい零したこんな言葉に雅治は少し笑って、私の手を引いて歩き出した――
―バタンッ
「ん!……」
雅治は玄関に入るやいなや、私を壁に押し付けて、キスをした。
口内を強く吸われて、雅治の舌が中に入ってくる。
頭がクラクラして、身体中が熱くなってきた。
雅治が私の腰に回している腕の力が強くなる。きっと、こうやって支えてもらわなければ、私はすぐに床に崩れてしまう。
そして一瞬、雅治が離れた。そして唇が触れそうな距離で言う。
「…会いたかったぜよ…」
胸が締め付けられるように痛くなった。なんて切なそうに、愛おしそうに、私を見つめてくれるのだろう。
「わたしも…」
今までの寂しさとか、会えた嬉しさとか、そういうものが涙になって出てきた。
変だよね。3日しか離れてないのにね。
私はそのまま床に倒された。
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