仁王連載
仁王君と大晦日B
「、名前」
何回か呼ばれたのに気付いて、テレビから目を離し雅治を見る。
ちゅ。
「明けましておめでとう、名前」
一瞬思考が止まる。明けまして…?
「…えぇ!!」
急いで時計を見ると、針は0時を過ぎていた。
「い、いつの間に!カウントダウンしてないのにぃっ」
私の慌てように、雅治が笑う。わあぁ間抜けすぎる!
「笑っとる間に年を越しとったんじゃな」
笑ってる間に…
そっか、なんかそれって……
「すごく素敵なことだね」
明けましておめでとう、私は雅治にそう言って、微笑み合った。
その後、番組を終わるまで見た。楽しかったぁ。今年は去年より面白かった。あ、雅治と一緒に見たからかな。
テレビを消して一息ついていると、雅治が後ろから抱きしめてきた。
雅治にこうされるの、好きだな。ドキドキするけど、安心する。
「…なんか不思議じゃ」
「ん?」
「名前がここにおるのが不思議じゃし、俺が名前の部屋におるのも不思議」
雅治はポツポツと、一言ずつ噛み締めるように言う。
「俺の彼女になってくれて、ありがとう」
その瞬間、この1年間のことが走馬灯のように駆け巡った。
「…何泣いとるんじゃ。困った子じゃのう」
顔が見えないから、雅治が本当に困っているのかいないのか分からなかったけど、撫でてくれる手はひどく優しかった。
雅治が私の涙を唇で受け止める。
いつの間にか向き合う形になっていて。止まらない涙が恥ずかしくて雅治を直視できないでいたら、無理矢理上を向かされて、唇を奪われた――
「…だから、狭いっていったのに」
「ちょうどいいぜよ」
「よくない!」
乳白色のお湯の中、肌を寄せ合う私達。
いや、寄せ合いたくはないんだけど、狭いから必然的にそうなっちゃうの!
「出たら第2ラウンドじゃな」
「な、なにが?」
「なんならここでするかのぉ」
「!!…やぁ…ちょ、ちょっと!どこ触って…ぁ」
夜はまだまだ長そうです。
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