仁王連載
仁王君と大掃除@
12月30日。
師走の一番忙しい週間。
なんとか年賀状は、元旦に届けられるギリギリの日に出せた。
よくやった自分!と、まるで今年の仕事は全部やりとげたような気になっていたが、そういえば大事なことが残っていたことに昨日気付いた。
家の大掃除。
高校までは、手伝ってはいたが母親がほとんどやってくれて、自分の部屋もちょいちょいっと適当にやっていただけだった。
だが今年の春に大学生になったのを期に一人暮らしを始め、初めての年末。
これは自分でやるしかない。
昨日大掃除を思い立って、昨日終わらせるつもりだった。
つもり、だった…(だってこんな小さな1R、一日で終わると思ったんだもん!)
だが実際はカーテンを洗って、キッチンを磨いて、お風呂も磨いて、トイレをぴかぴかにして、玄関を綺麗にして……それで力尽きた。
綺麗になった浴室で気持ちよくお風呂に入って、さぁ最後に一仕事。
プリントや教科書が山積みな机、漫画まみれのベッド、箪笥から溢れている服……あぁ、結構残ってるぅ……ちょっと…ソファでひと休み…してからにしよう…かなぁ……
そう思った私が馬鹿だった。
やってしまった。寝てしまった。
昨日で絶対終わらせるつもりだったのに!
だって、だって今日は−−−
ピンポーン!
『名前ちゃーん。いーれてー』
……仁王君が来てしまった。
そう。今日は私の恋人、仁王雅治君が遊びにくることになっていたのです。
仁王君とは夏の終わり頃から付き合っている。
春に大学で出会って、仲良くなって、いつからだったか、物凄くアプローチされ出した。(それはもうすごかった)
不器用な私は、大学のこととか、バイトのこととかで悩んでいて、恋とかそれどころじゃなくて。
それでも、ぐずぐずぐずぐずしている私に、仁王君はいつも優しくて。
慣れない街で、ひとりの部屋で、どうしようもなく寂しい夜に電話してしまったり…
夏祭りに行こうって、浴衣を着てきた私を見て、柄にもなく真っ赤になったことにびっくりしたり…
いつの間にか仁王君に惹かれていたのに気付いた夏の終わり。
何度目かもう分からないくらいの仁王君の告白に頷いて、私達は恋人同士になったんだ。
そしてこの間のクリスマス。
私達は初めて結ばれた−−
というのは別の話で!!
今はそれどころではない!
『名前ちゃーん?』
仁王君はインターホンの前で、私がエントランスのドアを開けるのを待っていた。
うぅ…笑顔が眩しい…
「ご、ごめんね!今開けるね」
どうしようっ…もうすぐエレベーターに乗って仁王君が上がってきちゃう!
部屋を見渡す。
…汚い!明らかに汚いぃ!
とりあえず、いろいろ床にとっ散らかってるものをベッドに投げ、その上から布団を掛ける。
もともと物で溢れていたベッドだから、別にいいだろう!
ピンポーン!
ああぁ…来たぁ…っ
来てしまったぁ……!
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