立海連載
休み時間 *仁王視点
もうすぐ次の授業が始まるというのに、名前がいない。
いまだざわつく休み時間の教室内を見渡すも、姿がない。
別に他の誰がいなくとも気にならないが、名前がいないというのは、どうしようもなく気になるんじゃ。
と、思っていたら、前の扉から名前が入ってきた。
やれやれ。
……だが友達やらに絡まれ、なかなかこっちに来ない。
何やっとるんじゃ…お前さんの席は、ここじゃろ?
「おかえり」
やっと来た名前に俺はそう声を掛けた。
「ただいまぁ」
友達との会話を引きずっているのか、名前は笑いながら、俺の前の席に座った。
誰かが行って戻ってきたら「おかえり」と言う。
これは名前がやっていたこと。
最初は、なんで家でもないんに言うんじゃろ、と思っていたが、その響きのあまりの暖かさに俺まで侵食されていったかのように、いつしか自分でも言うようになっていた。
「どこ行っとったん?」
名前の、にへら〜っとした顔を見たら、さっきまでの不安なんざどこかに行ってしまったが、一応聞いてみる。
「先生に頼まれて、さっきの授業の教材運んでたんだよ」
名前…いないと思ったらそんなことを頼まれとったんか。
「やなやが手伝ってくれたから楽だったぁ」
やなな…あぁ、柳か。
は、柳?
くそ、知ってれば俺が手伝ってやったんに。
参謀に先越されてしまったのぉ。
「今度は俺が手伝ってやるきに。そん時は言いんしゃい」
「わぁほんと?ありがと〜っ」
分かった、と名前が笑った瞬間、日直の「起立」という声が響いた。
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