立海連載
笑顔 *柳視点
「重そうだな、持ってやろうか」
移動教室からの帰り。階段を降りきった丁度その時、名前が前方を通過するのが見えた。
何やら重たそうな荷物を抱えていて、それに集中しているのか、俺には気付かなかったようだ。
俺は思わず声を掛けた。
振り向く彼女。俺を見た瞬間、ぱぁっと顔を綻ばせた。
「え、ほんとー!ありがと〜!やなな優しいぃー」
本当に嬉しそうな笑顔。
じゃあ私がやななの荷物持ってあげるね、と言ってきた名前に、俺は微笑んで、教科書やペンケースを渡した。
皆、名前を甘やかし過ぎなんじゃないかと思う。
いや、俺も、か。
しかしこればかりは仕方ないんじゃないかと思ってしまう。
ちょっとしたことでも名前は嬉しそうに礼を言う。だから、こちらも嬉しくなってしまう。別に礼を言って欲しいからじゃないが、名前があんまり喜ぶもんだから、つい手を貸してしまうんだな。
名前は決して人の好意を無駄にしない。その姿勢は見習うべきものだと思う。
「ありがとねっ」
「あぁ」
教材を準備室に運び終え、名前と別れる。
全く、どうしてあんなに無垢な笑顔が出来るんだか。
名前といると暖かい気持ちになる。
何も気負わなくていい気分になる。
ほっこりとした気持ちを抱えながら、俺は自分の教室へと戻っていった。
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