立海連載
ごみ箱事件 *幸村視点
名前って、ほんと見てて飽きない。
部活が終わり、各々着替えたりぐったりしたりする中、俺と名前は机に座り、部誌を書いたり書類の整理をしたりしていた。
「ごみ捨てよぉっと」
その時名前が立ち上がったので、ついでにと思い、頼み事をした。
「あ、名前。ついでにこれ、真田に渡してくれる?」
「いえっさー」
ふふ。相変わらず可愛いなぁ。なんて思いながら、ぼんやり名前を目で追っていた。
ごみ箱に向かう名前。
あ、そっか。ごみ捨てるって言ってたもんね。
と、その時―――
バサッ
「あっ、間違えたっ」
その瞬間を、俺と柳と仁王と丸井が目撃していた。
ぷっと誰ともなく吹き出す。
それが爆笑となるまでに時間はそう掛からなかった。
仁王はツボに入ったらしく、脇腹を抱えながらロッカーに寄り掛かっている。
丸井もベンチの上で腹を抱えていた。
「みんなっ…笑わないでよぉ!」
「名前……お前やっぱ天才っ…」
「さなっ…真田が不憫じゃのう…」
そう。名前が捨てたのは、自分のごみではなく、俺が渡した真田の電子辞書。
「名前。これは真田に報告だね」
「ややや!待って!わざとじゃないんだよ〜!!」
「精市…名前がこういう場合ごみじゃない方を捨てる確率100%だ」
「やななも!笑いながら言わないでよ!ってゆうかそれフォローじゃないぃ…」
「む?何の騒ぎだ?」
そこでタイミング良く真田が登場。
「あぁ〜!えぇっとぉ…あ、あ、これ!ゆっきーが渡しといてって!」
「……なぜごみ箱から?」
その後また皆で大爆笑。
そして翌日にはこの事件は全テニス部員に伝わっていた。
「名前せんぱーい!聞きましたよ〜!あーあ!生で見たかったっス!先輩、もう一回やってくれません?」
「…ふえーんっ…皆がいじめるよおぉぉ」
それはさ、名前が可愛い過ぎるのがいけないんだよ。
ほんと、飽きないなぁ。
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