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00≫≫PARALLEL
気付く想いに瞼を閉じた 3



ライル・ディランディは、意外な程簡単に見付かった。

テロの被害者として自身の体験を元に平和を訴え、ルックスの良さも合間って彼の著書は全世界でヒットを飛ばしている。

そして、今は地球連合・平和維持軍の広告塔としても活躍している―――。

これだけメディアに露出しているのに気付かなかったなんて、どれだけ世界に興味が無いんだ。

アレルヤも刹那も、私も。


ウェブページから、近く彼の新作の出版記念パーティーがあるらしい事を知る。

そこに入り込めば、この男に会える。


―――モニターに映るその笑顔は、ロックオンが生きていると錯覚させる程に良く似ていた。





少しの細工で入り込んだパーティーは、一人の作家の出版記念にしては派手な印象だった。
出版の関係者以外にも軍事関係者がうようよする、嫌な雰囲気。

その中心には、ライル・ディランディ。
彼の回りには若い女、そして媚びへつらう男が群れている。
その中で上質なスーツをセンス良く着こなし、柔らかな笑顔を見せるのに、私は目が離せなくなった。

ふと視線が合い、ライル・ディランディはこちらに近付いた。
そして私の前で歩みを止めると、その人懐こい笑顔で私を見た。

「君、名前は?」

ロックオンよりも少し軽い声色。

………違う。
ロックオンの声は、冗談を言う時でさえ緊張に満ちていた。

「…まず自分が名乗ったらどうですか?」

彼の取り巻きから『先生に向かって何て失礼な』と、ヒソヒソと声が上がる。

当然だ。
ここは彼の本の出版記念パーティー。
彼を知らない者はここには存在しない筈なのだ。

「ああ!それは失礼。僕はライル・ディランディ。宜しければ、お名前をお聞かせ頂いても良いかな?」

本人は気にした様子も無く、屈託無くそう笑う。

「…ティエリア・アーデ」

それがあまりに懐かしく、思わず答えてしまう。

「ティエリア…美しい名前だね」

「…っ……」

ロックオンと同じ。

『綺麗な名前だな』

初めて会った時、ロックオンはそう言った。
その時は『ただのコードネームだ』と突っぱねたけれど、本当は少し嬉しかった。

ただのコードネームだったそれが、特別な意味を持った瞬間。


………さっきからどうしたと言うんだ、私は。

ロックオンとライル・ディランディの似ていない所、似ている所を探しては感傷に浸っている。


「ファーストネームで呼ぶのはまだ早いかな、アーデさん?」

「いえ…構いません」

「ありがとう、ティエリア。所で君は、一目惚れを信じる?」

―――こんな風に予想外の事を言い出すのは、貴方と良く似ている。


この日常を生きてきて、初めて泣きそうになった。

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