00≫≫PARALLEL
気付く想いに瞼を閉じた 2
『でも、おかしいんだ。何て言うか…ロックオンだけど、違う人みたいで…』
再び刹那から携帯を取り戻したアレルヤは、曖昧な言葉を紡ぎだした。
どういう事だと問えば、ロックオンはアレルヤや刹那を見ても何も反応をしなかった。
まるで見知らぬ人であるかの様に。
そして負傷した筈の右目は傷一つ無く、何より纏う雰囲気がまるで違っていたらしい。
他人にしては似過ぎているが、本人では無い。
ならば―――…。
「…アレルヤ、スメラギ・李・ノリエガの連絡先は知っているか?」
『スメラギさん…?』
アレルヤとの通話を終え、そのまま教えられた連絡先に音声通話でコールする。
一回、二回、三回…。
『はい?』
三回目のコールで出た彼女の声は、あまり昔と変わらない気がした。
「ティエリア・アーデです」
『ティエリア?どうしたの、一体?』
「ロックオンの家族構成を教えて下さい」
そう用件を告げると、一瞬息を飲む音がした。
『突然ね…なぜ私に聞くのかしら?貴方達の情報は最重要機密に入っていたんだから、私が知る筈無いわよね』
「貴女は知っている」
これは予想では無く確信。
ロックオンは彼女に話しているだろう。
自分の生い立ち、家族、本名…そしてソレスタルビーイングに参加した理由も。
ロックオンが彼女の過去を知っていた様に、きっと彼女は知っている。
さっきから襲うモヤモヤとした原因不明の胸の痛みを抑え、欲しい情報を得る為に冷静を装った。
『………敵わないわね、貴方には…良いわ。教えてあげる』
諦めに似た溜め息と共に、彼女は話し始めた。
スメラギ・李・ノリエガが言うには、テロによって亡くなったのは彼の両親と妹。
そして生き残ったのは彼と、そして彼の双子の兄弟―――ライル・ディランディ。
アレルヤと刹那が見たのはそのライル・ディランディである可能性が高い。
やはりロックオンが生きているなんて、おかしな幻想。
『ティエリア、元気でいる?』
私がロックオンの家族について聞いた理由を問わず、彼女は私の安否を問うた。
「………はい」
『そう…良かったわ』
本当に良かった、と彼女は繰り返し通話を終えた。
―――何で私には、双子の兄弟の存在を教えてくれなかったんですか?
ヴェーダで貴方のデータを閲覧すれば良かった。
アレルヤや刹那のデータは閲覧しても、貴方のデータだけは閲覧しなかった。
それが信頼の証だと思っていたけれど、こんなに嫌な気持ちになるなら見てしまえば良かった。
他の誰よりも、少しでも貴方に近付きたいと、そんな理由でライル・ディランディに会おうとする私は酷く愚かな存在かもしれません。
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