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00≫≫PARALLEL
気付く想いに瞼を閉じた 1



私は貴方が好きでした。

それが単なる友情か、それとも愛情か。

未だに曖昧なままだけれど。



『ティエリア…あの、さ』

『何か?』

『………やっぱ良いわ』

言い澱んだはっきりしない態度は、およそ貴方らしくないと思いました。

だから不機嫌な顔をして見せると、『この戦いが終わったら言う』と貴方は約束しました。

それは生きて帰る約束と似ていて、私はとても安心したのを覚えています。


―――約束は、果たされませんでした。


貴方が居なくなって、私は貴方の元に行きたいと願いました。
けれど私は助かって、世の中は良くも悪くも思う様にはいかないものだと知りました。


貴方が居なくても、何とか私は日常を生きています。

貴方の居ない世界に慣れてしまう事に、僅かの罪悪感を伴いながら。


もしも生きて帰れたら、貴方は私に何を言おうとしていたんですか?


それだけが、今も気になっています。





普段は鳴らない携帯の着信音に起こされ、長くなった髪を掻き上げた。

通話ボタンを押すと共に表示されるモニターには、久しく連絡を取っていなかった図体ばかりが立派な男が映った。

『ティエリア!大変なんだ!!ああ、もう何から話せば良いのか…!とにかく本当に驚いたんだよ!!』

顔の半分を隠していた欝陶しい前髪を後ろに撫で付け随分と垢抜けた感はあるが、こちらは寝起きなのにだとか、本当に久し振りなのにだとか、そういった空気を一切読まないで騒ぎ立てる様子は、相変わらずでうんざりする。

そもそも、私の携帯のナンバーなんてどこから…とそこまで考えて、それは愚問だと気付く。

地上で日常を生きる今も、私は『ティエリア・アーデ』というコードネームで生活を送っている。
それは、ソレスタルビーイングが壊滅しておらず、未だ自分はガンダムマイスターである事の証。

恐らく、私のプライベートなデータなどは王留美あたりには筒抜けなのだろう。

「アレルヤ・ハプティズム…要点を整理して話せ」

サイドボードに置かれた眼鏡を掛けながら、溜め息と共に苦々しく告げると、携帯のモニターが映す風景が乱暴に揺れ、アレルヤが誰かに携帯を奪われた動きを見せた。

次にモニターに映ったのは、実際の年齢よりも随分と子供の印象だったあの男………だと思う。

「刹那・F・セイエイ…?」

思わず確認した理由は、容姿の印象が記憶とは全く違っていたから。

彼は少年のあどけなさを失い、とても精悍な顔付きの青年に変わっていた。

しかし瞳の強さだけは変わらず、モニター越しに私を見ながら静かに言った。

『ロックオンを、見た』

「…え―――?」

鋭利な刃物で切り裂かれる様な感覚が私を襲う。





ロックオン、私は貴方が好きでした。

それが単なる友情か、それとも愛情か。

貴方が生きているならば、貴方が私に言いかけた言葉と共に、私はそれを知る事が出来るのでしょうか―――?

next...

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