[携帯モード] [URL送信]

00≫≫PARALLEL
利己的な遺伝子 1



目が覚めた彼女は、多分そこに彼が居るのだと思っていたのだろう。

「…ティエリア、判る?」

徐々に焦点の合う瞳は落胆の色に染まるのを隠しもしないので、僕は思わず笑ってしまった。

「…アレ、ルヤ…?」

「良かった…無事で」

ティエリアは僕の言葉で生きている事を悟ったのだろう。
驚きに目を見開いた後、ボロボロと涙の粒を目尻に走らせた。

「良かったんだよ、生きてて…もう君一人の体じゃ無いんだから」

「…え…?何…」

その目を手の平でそっと塞いだ。

「もう一眠りしなよ。まだ、眠いでしょ?」

ティエリアの呼吸が静かな寝息に変わったのを確認し、手の平を退けるついでに、涙の跡をそっと拭ってやった。

「…下手こいてんじゃねぇよ」

失った半身の口振りを真似てみた。

酷く暴力的な気分だった。
まるで、失ったのではなく融合されたような。

もちろんそんなのは幻想にしか過ぎない。



ティエリアを救出した後、精密検査に掛けられたその体は思わぬ結果を知らせた。

彼女は妊娠していた。

十中八九、ティエリアのお腹の中の子の父親はロックオンだろう。

死ぬかもしれないって時になに子作りに励んでんだ、こいつら―――と、呆れた。

何で置いて行ったのかと、彼に幻滅した。

右目を覆う包帯に手を伸ばし、包帯の端を掴むと一気に解いた。

傷は目では無く、目のすぐ上。
瞼が引き攣る感覚はあるが、視界に異常は無い。

「お揃いにならなくて良かったね、ロックオン」

ガラスに映る右目は、左と同じ灰色をしていた。

失うばかりの中で、君を見付けた時は、もう失わずに済んだと喜んだけれど。

ねぇ、ティエリア。
君はその子を産みたいと言うかな。
失った絶望を、得る希望に変えるのかな。

眠るティエリアの髪を撫でながら、僕は無性に泣きたくなった。

next...

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!