OTHERS
temptation
学園ヘヴン(丹羽×西園寺)
唇が触れる瞬間、イタズラ心が働いて少し顎を引いて唇を遠ざけてみた。
「…嫌か?」
優しいお前はそんな私の気まぐれに怒ったりはせず、ただただ困った様な悲しい様な表情で私にお伺いを立てる。
ああ、愛おしい。
誰よりも強く、誰よりも賢く、学園の『王様』と称されるこの男が、ふとした時に私にだけ見せる弱々しい姿。
その姿を見るだけで愛しさが込み上げてくる。
「…丹羽、私を愛しているか?」
首に腕を回して聞けば、深い海を思わせる瞳を真剣な色に染めてその中に私を映す。
「ああ、勿論だ。愛してる」
何の装飾も無いストレートな物言いは、お前らしくて好ましいと思う。
「そうか…ふふ…気分が良いぞ」
途中になっているキスの続きを、今度は私から仕掛ける。
触れる瞬間、ツイ…と離れた唇は笑みを湛えて歪んでいた。
「郁、お前は?俺を愛してるか?」
形勢逆転。
なんて卑怯なんだ。
例えばいつもの様に『郁ちゃん』などとふざけた呼び方で私の名を呼んだのなら、私はいくらでも文句が言えて優位な立場のままでいられたものを。
いつもとは違う呼び方、優しい男の意地悪な視線。
私はそれに屈服するしかないのだ。
「…愛している」
ゾクゾクと背中を駆ける服従の甘い誘惑。
「いい子だ…」
そっと髪を撫でられれば、いつの間にか引き寄せる為に回した筈の腕が縋る為の腕に変わり、はしたなく私はキスをねだる。
腰を引き寄せられ、やっと与えられた激しいキスに、私は吐息を漏らしながら応えた。
この先も貴方のお気に召すまま―――お前が私に屈服するその時まで。
**********
主導権の握り合い。
でも実は、いかに郁ちゃんが王様を好きかを語っているだけなのかもしれません。
…デレばっかりでツンが無いよっ!
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