00≫≫1st SEASON
不機嫌なピンク 3
それにしても細い腰。
ちゃんと飯食ってんのか?
あー…でも抱き心地良いかも―――…
「あの…」
無遠慮に腰に手を這わせているロックオンに、ティエリアは怖ず怖ずと話し掛けた。
「ん?」
「…くすぐったいです」
肩に掛けたバッグを両手でぐっと握って、擽ったさに堪えている様子だが、その表情は俯いていてロックオンからは見えず少し残念に思ってしまう。
もしかしたら真っ赤な顔で困っているのかもしれない。
そうだったらどんなに可愛い事か。
「ああ、悪ぃ悪ぃ」
名残惜し気にティエリアの腰から手を離すと、ティエリアはホッとした様に息を吐く。
「休憩する?」
ロックオンは離した手でどこにでもあるファーストフード店を指差した。
時折、店に入って洋服やら雑貨やらを見たりはしたがずっと歩き通し。
しかも人と歩くのは慣れていないであろうティエリアは、ロックオン以上に疲れが溜まっている筈だ。
「あ、はい…」
もっとも、ティエリアは何かと悪戯を仕掛けてくるロックオンに気を取られて、疲れている事さえ言われるまで気付かなかったくらいだけれど。
「さて…どうすれば諦めるんだろうな」
近くもなく、かといってこちらの様子を伺えるくらいの遠くもない席を陣取る男の痛い程の視線を背中に感じながら、ロックオンは僅かに苦笑した。
「………」
まったく、ヴァーチェで殲滅出来ればどんなに楽か………いや、あの男ならヴァーチェで吹っ飛ばしても生きていそうだ。
物騒な事を考えながら、ティエリアはストローの端を忌ま忌ましそうに噛む。
「この後どうする?」
「もう帰りたい…」
そろそろ我慢の限界か。
ロックオンの問い掛けに、弱々しくティエリアは答えた。
その容姿に反して過激な思考を持つティエリアにしてみれば、良く我慢している方だろう。
「良いのか?あれ」
ロックオンが視線をちらりと動かして背後の男を示すと、ティエリアのこめかみがぴくりと動くのが見えた。
そう。今の所、何一つ問題は解決などしていないのだ。
「…っ!大体、貴方はベタベタ触るだけで何の解決にもなっていない!何の為に貴方とこんな…」
苛々と不満をぶつけるティエリアに、ロックオンはフライドポテトをかじりつつ『落ち着け』とティエリアを宥めた。
「だーから!ベタベタしてりゃ諦めると思ったんだよ。お前だってそれを期待して恋人役なんざ頼んだんだろうが」
「………」
図星を指されても認めたくないのか、ティエリアは何も言わずにそっぽを向いた。
その頬は少し膨れている様に見える。
まったく、いちいち可愛い反応をする。
「行くぞ」
ロックオンは食べ終わった残骸が乗るトレイを片手に、もう片方はティエリアの腕を取って強引にティエリアを立ち上がらせた。
ここでこうしていても埒があかない。
トレイの上のゴミをダストボックスに放り込みながら、あの男が着いて来るのを横目で確認した。
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