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00≫≫1st SEASON
不機嫌なピンク 2



「なぁ、せっかくなんだから恋人らしく手くらい繋がないか?」

翌日、地上に降りてティエリアのいつもの買い物ルートらしい街中を歩きながら、ロックオンは暢気に言った。

「繋ぎません」

ティエリアはいつ例の男が現れるかとピリピリしていて、ロックオンの軽口は殆ど無視される。
ロックオンにしてみれば言いたい事を言っても咎められない分、随分とありがたい状況だ。

「それにしてもティエリアを連れて歩いてると気分が良いな」

ティエリアは『下らない』と呟いたが、実際男としてこれ程の優越感は無い。
擦れ違う人の全てがティエリアに目を奪われ、そしてその隣を歩くロックオンに男達は羨望の眼差しを向けるのだ。

これくらいの役得が無ければ、恋人のフリなんてやってられない。

大体、そんな都合良く毎回毎回同じ男に遭遇するものか。
ここまで策を労しても何も無く終わるのが常だ。

そうロックオンが欠伸を漏らした時、ティエリアがロックオンの腕を引き寄せた。

「…居た…」

「マジかよ?」

ショウウィンドウ越しにティエリアの視線を追えば、なるほどしつこそうな男がこちらを窺っているのが映っている。

今日はいつもと違って男連れだから、様子を見ている…といった所か。

ロックオンはティエリアが腕を引き寄せた事で近付いた肩に腕を回し、華奢な体を抱き寄せた。

「な…っ!?」

咄嗟に抵抗を示すティエリアに、ロックオンは人懐こく片目を瞑って見せた。

「騒ぎなさんなって。俺達が恋人同士に見えればあの男も諦めるさ」

苦々しく眉をひそめるティエリアだったが、元々そのつもりでロックオンを連れ出したのだ。
溜め息を一つ零して、ロックオンのしたいようにさせた。




「マジでしつけー…」

最初に遭遇してから小一時間。
飽きもせずに着いて来るその男は既にストーカーの域だ。

ロックオンがそれを言えばティエリアは『だから言っただろう』とうんざりした様子で返した。

良く良く見れば、そこそこな容姿の上に自信に満ちた態度。
女受けは良い筈だ。
さっさと諦めて他の女をナンパすれば良いのに。
どうやら冷たくあしらわれると燃える厄介なタイプらしい。

肩に腕を回すのも疲れ、腰に手を伸ばすロックオンにティエリアは眼鏡の奥から睨んだ。

「あまり調子に乗らないで下さい」

軽く身をよじってその手から逃れようとしたが、ロックオンは心外だとばかりにティエリアを睨み返す。

「誰の為にやってると思ってんだ」

だからと言って好き勝手に体に触れなくても良いのではないか。

そう思ってみても、今は彼に頼るしか無いのだ。
湧き出る文句の言葉をぐっと飲み込み、ティエリアは小さな抵抗を止めた。

「…腑に落ちない」

「そう言いなさんなって」

心の中で舌を出したロックオンは、遠慮無くティエリアの細い腰に腕を回した。

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あきゅろす。
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