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00≫≫1st SEASON
不機嫌なピンク 1



「か〜のじょ!俺と付き合わない?」

買い物の途中、カフェのオープンテラスで本を片手に注文した紅茶を待っていたティエリアに、思いも寄らない邪魔。

類い稀なる美貌を持つティエリアだが、こう見えてナンパの被害には遭った事が無い。
まず、性別がわからないから声を掛けようが無いし、例え男か女、どちらかに判断されたとしても、綺麗過ぎて並の人間では声を掛ける勇気など無くなるのだ。
つまり、今ティエリアをナンパしてきた男は並の人間では無いらしい。
よっぽど自信があるのか、勝手に隣の席に陣取り、勝手に『彼女と同じもの』何て注文まで済ませる始末。

ティエリアはその軽薄そうな男の顔を一瞥すると、無視を決め込む事にした。

話し掛けてくる声は街中の騒音だと思えば良い。
例え触れてきたとしても、その時は叩き落とせば良い。
どうせすぐに宇宙に帰ってこの男とは二度と会わない関係になるのだから、一々相手をして余計な体力を消費したくない。

この時点でティエリアはそれが間違った選択である事に気付かなかった―――。




バンッ!!

酷く苛立った音で食堂のテーブルを叩いたティエリアに、目の前で食事中のアレルヤはびくりと肩を震わせた。
刹那はちらりとティエリアの様子を伺った後に早々と出て行き、少し離れた場所でコーヒーを飲んでいたロックオンは『穏やかじゃねぇなぁ』と漏らすが、触らぬ神になんとやら。
怒るならアレルヤだけにしろよ、とそれっきり存在感を消す事に勤めた。

ゆらりとティエリアから立ち上る怒りの気配に、『やっぱり僕、怒られるのかなぁ…』と身に覚えの無い覚悟をアレルヤがしたその時、ティエリアの口からは思ってもみない言葉が飛び出した。

「アレルヤ…ロックオンでも良い。俺の恋人になれ」

アレルヤがフォークを落とすのと、ロックオンが盛大にコーヒーを噴き出すのはほぼ同時だった。




「…つまり、地上に買い出しに行く度に妙な男に言い寄られるって訳だな?」

嵐のような騒ぎが襲った食堂に漸く落ち着きが戻った頃、ティエリアからの爆弾的告白をされたアレルヤとロックオンは詳しい説明をティエリアに求めた。

地上が嫌いなティエリアだが、買い出しには頻繁に行く。
生活圏と切り離して考えれば、地上に降りる事はそれほど苦にはならないらしい。

だがあのナンパの後、それっきりになる筈だったあの男と地上に降りる度に出会う様になったのだ。

「俺と君は運命の赤い糸で結ばれている!」

なんて妙にテンションの上がる男に比べ、ティエリアは『もういい加減にしてくれ!』と誰彼構わず助けを求めたい気分。

クリスティナやフェルトに買い物を頼んではみたが、流石に毎回という訳にもいかず、考えた末に出した結論は『諦めさせれば良い』という事。

だが、いかんせんあのハイテンションでしつこい男。
今更自分一人が『もう声を掛けるな』『迷惑だ』などと言っても効果は見込めない。

「だから僕かロックオンに恋人のフリをさせて、その男を諦めさせたいんだね?」

ロックオンとアレルヤの対面に座るティエリアは頷く。

綺麗に生まれるのも考え物だな、とロックオンがぼんやり考えていると、左側に座るアレルヤが笑顔をこちらに向けた。

「じゃあ、ロックオンの方が良いよね」

「はぁ?何で…」

さも当たり前とばかりに言ったアレルヤの言葉に、ロックオンは顔をしかめた。

「だって、フリだけなら出来るかもしれないけど、その男に何か言われたら僕じゃ対処できそうに無いですから…」

情けなく眉を下げて言うアレルヤに、納得しかけるも面倒はなるべく避けたい。
何か別の案を…とティエリアを見ると、期待を持った赤い瞳がロックオンをじっと見詰めていた。

ああ、駄目だ。
頼られると弱い。

ロックオンは渋々、ティエリアの恋人役を引き受けた。

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