長編 7 今日は雨か。 僕はまた“あそこ”に向かう。 あ、沢田。 …様子が変? 猫を胸に入れて屈み込み必死に抱き締めている。 「…沢田!!」 気づいたら前に出ていた。 傘を沢田の方に寄せる。 「君ずぶ濡れじゃないか」 「ぅ…ヒバ…っ、さんっ…!助けて…っ!」 「え?」 彼は泣いていた。 いつも無表情な彼が。 何をされても泣かなかった彼が。 「何?!どうしたの?」 僕も彼に合わせて屈む。 「猫が…っ、冷たく、なってっ」 「…!あの猫…か」 「…え?」 「立って!」 バサッ 傘を放り、 僕は彼の手を引き、病院に駆け出した。 [*前へ] |