長編 4 最後の見回りに出るところの事。 みゃー、と猫のような鳴き声がした。 「そこか」 電柱の隣に段ボール箱が置いてある。 こんな所に捨てるなんて咬み殺す。 と、一歩踏み出したときだった。 誰かが段ボール箱に近寄り…猫を抱き上げる。 物陰から様子を見る事にしようか。 「あれは… 沢田?」 沢田らしき人物が猫を抱いたまましゃがみ込む。 「お前、捨てられちゃったのか?」 沢田の声。 「みぃー」 「可哀想に…。本当は俺が飼ってやりたいけど…無理なんだ…ごめんな?」 「みゃー…」 「よしよし」 沢田が猫を撫でていた。 優しい笑みを浮かべて。 へぇ。あの子笑うんだ。 いつも無表情だから笑わないと思ってた。 声掛けようと思ったけどやっぱ良いや。 今日はそっとして置いてあげる。 僕は踵を翻し、その場を後にした。 [*前へ][次へ#] |