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小説
エドロク学園パロ
「ロックちゃん、遅刻するわよー!」

「いってきまーーす!」

俺はあわてて、溶けかかったバターののった、焼きたてのトーストを口にくわえた。

俺はロック=コール。一応高校生やってる。

やべっ! 遅刻しそうだ!!

そう思ったとたん、誰かにぶつかってすっ転びそうになった。


「おっと……」

それをかろうじて受け止められる形になった。

力強い腕に支えられて見上げれば、俺の大嫌いな顔が、そこにはあった。

エドガー=ロニ=フィガロ。

生まれた時から隣に住んでるいけすかねー野郎だ。

自分が8月生まれで、11月生まれの俺よりちょっと先に生まれたからって、
いちいち偉そうに色々口出してくるのが、すげーうぜー!

最初は同じぐらいだったのに、小学生ぐらいからぐんぐん背を伸ばしやがって
今では見下ろされる身長差になったところがまたムカつくっ!



「エドガー! てんめっ!! はなせよ!!」

がっちり抱きかかえられた腕を振り払う。


むっとしている俺を見下ろして、エドガーの野郎は、フッ といやらしい冷笑を浮かべる。

「口にパンを咥えて登校とは……まったくお前は、一体いつの時代の少女マンガのヒロインのつもりなんだ……?」

「うるせーー!! てめーだって少女マンガに出てくる変態野郎みてーなつらしやがってよ!」

まったく、腹が立つ野郎だぜっ。
イライラをぶつけるように、トーストをガリガリ齧りながらエドガーを睨みつける。


こいつの下駄箱を開けると、冗談みてーに毎朝ラブレターの山が崩れ落ちてきやがる。

なにがそんなにモテるんだか、俺にはしんじられねー。
しんじられねーくらいに整った顔立ちをしてやがるのがまたむかつく。
皆こいつのこの面にだまされてるにちがいねー!


いらいらしながらじっと見上げていると、目の前のエドガーの野郎がなぜか固まっていた。
……その顔が、心なしか、紅くなっているような気がする。

「んだよ!? ぼーっとしやがって! 熱でもあんのかよっ!?」

噛みつくように叫んでやると、はっと我に返ったように青い瞳を瞬く。

それから、なぜか困ったように俺から目を逸らして、指で頭を掻きはじめた。
それを見て、俺まで落ち着かない気分になってくる。


……こいつのこんな顔と仕草、生まれて初めて見た気がする……

妙な空気が流れている気がして、俺もぎこちなく首筋を掻いた。


それからややあって、エドガーが芝居がかった仕草でふっ と息を吐いて髪をかきあげて見せた。

「……いや……俺の顔はそんなにいつまでも見詰めていたくなるほどのハンサムかと思ってな?」

片眉を吊り上げたエドガーの野郎が面白そうに見下ろしてくる。

「な!?」

瞬間的に顔が熱くなった。

「ふざけんじゃねー! 誰がてめーの顔なんか!!!」

楽しげにくつくつと目の前で笑うエドガーに、反射的に手を出していた。

だが、殴りかかろうとした拳をあっさりと、俺よりもふたまわりばかりでかい手のひらで包み込まれて握りしめられてしまう。

「てめ! はなせ!!」

じたばたもがいても、ちっともほどけなかった。くそっ! この馬鹿力め!


必死でもがいてるこっちを綺麗に無視して、エドガーが俺の顔をじっと覗き込んでくる。


「ロック……」

「な、なんだよ……」

くそ……っ
こいつ……こうやっていつも女を口説いてやがんのか……!


そう舌打ちしたくなるぐらいに、その顔が真剣だった。


気がつけば目の前でエドガーの口元が動いていた。
吐き出す息までが顔にかかりそうな距離だった。
エドガーは俺のくちびるの端を指先でぬぐうと、手に付いたパンくずを自分の舌でぺろりと舐める。


「パンを咥えておてんばもいいが、それでは嫁の貰い手もなくなるんじゃないのか?」


にやりと笑みを浮かべて、エドガーはもう一度その指を目の前で舐めて見せた。
ゆっくりと……。
我に返って俺は、無性に恥ずかしいことをされたのに気がついた。

ちろちろと出し入れされる厭らしい舌の動きを見て、
蛇に睨まれたかえるのような気分になってくる。

「エドガー!!てめーー!」

誰が嫁だぁあああああ!!!

俺が怒りだすと、ははっと面白そうに笑ってエドガーが駆けだした。

「待ちやがれこのド変態野郎!!


!!!


あーーーーーー!! てめーのせーでチャイム鳴っちまったじゃねーか!」


なんで毎朝こいつと追いかけっこしなきゃなんねーのか全然わかんねー。そんなわけでいつもどおりの俺の朝が始まった。 

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あきゅろす。
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