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MONSTER HUNTER*anecdote
幕開け
シュレイド地方の西部に広がる森と丘。
木々は光を遮るように生い茂り、小さな生命を胸に抱く。そして平穏なる丘には今日もまた、腹を空かせた草食竜の群れが集まっていた。

豊かな自然と、温暖な気候に恵まれた大地。どこまでも続く緑は、いつだってこの世界の広さを感じさせてくれる。まるで、無限の可能性がそこにあるようだ。

そんな生き物達の楽園とも言えるこの地には、古くから小さな村が存在した。
年老いた少し頑固者の村長と、気さくで働き者の村人達が暮らす村。名を、ココットという。

彼等はこの辺りで取れる鉱石や、野草を活用した自給自足の生活を送っている。質素ながらも満たされた暮らしは、平和な日々と自然がもたらしてくれる掛け替えの無い宝であった。

しかし。その村は今、ある問題を抱えていた。それも、村の存続に関わる深刻な内容だ。

最近になって突然、飛竜と呼ばれる大型のモンスターが、近くの小高い山に巣を作ったのである。それ以来、丘に棲む草食竜を捕食する飛竜の姿が、村人達に何度も目撃されるようになったのだ。

これでは、迂闊に資源の採取に行けたものではない。もしも飛竜に襲われたら、非力な村人を待っているのは“死”だ。村を襲われたら、それこそおしまいである。

突然やってきたモンスターにより、村人達はすっかり恐怖におののいてしまった。早急な対応が必要だと、村長は頭を悩ませる。こうなってしまったら、『彼等』に頼る他に道は無い。

村長は、モンスターの狩猟を生業とする者・ハンターの派遣を街のギルドに要請する。我が物顔で自在に空を飛び回るあの竜を、街のハンターに狩猟してもらうのだ。

ココット村の人々は祈る様な気持ちで、竜を狩るハンターの到着を待っていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


数日後。青空の下に、ココット村へ向かう一人のハンターの姿があった。

少し日焼けしたその顔には、まだあどけなさが残っている。空と同じ色をした瞳を持つ、小柄な少女だ。太陽の光を浴びて輝く黄金色の短い髪が、風に吹かれてさらさらと揺れていた。

鞣革で出来た軽い鎧を身に纏い、身の丈よりも大きな剣をその背に担ぐ。腰に巻き付けられたポーチは、アイテムを詰め込み過ぎてはち切れそうだ。鋼のブーツがやけに泥だらけなのは、道なき道でも歩いて来たのだろうか。

「あれがココット村ね」

丘の上から村を見下ろし、少女は呟く。手に持つ地図はもう不要。小さく畳んで無理矢理ポーチに捩込むと、彼女は一気に丘を駆け降りた。

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