[携帯モード] [URL送信]

ロストウォーリア短編
眠れない羊は狼と一緒?【はゆメグ】
深夜0時。
皆が夢の中にいるであろう時間、3階に静かなノックの音が響いた。
「ん…誰なのさ…」
部屋の主―隼遊は、起こされたことに不満を抱きながらも眠い目を擦り、ドアへと駆けていく。
そこにいたのは…予想通りの人物。
淡い緑のパーカーにショーパン、フリルのたっぷりついた枕を抱えて立っている少年―唯凪。
これで何回目だろう。夜に訪れる彼は、いつもより可愛さと色気が増しているように見える。
「眠れないの?」
「うん…」
隼遊は、彼の姿を見て気づく。
お風呂も着替えも済ませ、あとは寝るだけという格好なのに、目だけはぱっちりと開いたままだ。
「…おいで」
優しげに微笑んで、唯凪を部屋の中に迎え入れた。

この屋敷での決まり。夜に異性を自分の部屋に入れてはいけない。
しかし同性同士の場合、そのような約束はない。
「好きなところに座ってて」
そう言われてベッドに腰かけた唯凪の方を向くと、隼遊は目を見て問いかける。
「何か飲み物でも…そうだ、ミルクティーでいい?」
「うん、ありがとう…はゆたん」
笑顔でお礼を言う唯凪に対し、目を合わせられない隼遊。自分の顔が赤いのには気づいているようで、急いで冷蔵庫の方へと行った。
「どうしたんだろ…」
そう呟くと、唯凪はベッドに倒れこんだ。夜中なのに冴えた感覚はなかなか静まらない。
とりあえず、今日を振り返ろう。
朝は卵を1つ無駄にしてしまった。反省。昼間はゆたんと出かけたカフェは、なかなかの味だったなぁ。そのまま同人誌を買いに行った。僕の10作目、人気バレー漫画を題材にした作品は売り上げが好調らしい。今日の戦利品は、僕のものよりもトーンの使い方が上手くて参考になった。そして…。
「おまたせ、メグ。熱いから気を付けてね」
「えっ、うん」
驚きのあまり飛び起きてしまった。考え事をしていると、つい周りが見えなくなってしまう。悪癖だとわかっているが直らない。
「いただきます………んっ、甘くて美味しい!」
はゆたんはいつも、僕が夜に来るとミルクティーをくれる。同じ色、同じ温度、同じ味…僕を眠りに誘うのにぴったりだ。
「そう?よかった…味見したんだけど、いつもより味が薄い気がして」
「そんなことないよ、いつもと同じで安心した」
笑う唯凪の隣に隼遊は座った。
「はゆたん…僕の選んだパジャマ、使ってくれてるんだね」
「メグはセンスいいからね…これもそうだし、メグの選んでくれたのじゃないと安心して眠れないよ」
「そっか…嬉しいな」
「これからも、一緒に選んでよ」
隼遊が唯凪を抱きしめたままベッドに飛び込んだとき、唯凪は何かに気づく。
「ひゃっ、固いの…当たってる」
照れながら言う唯凪に、
「ごめんごめん。でもメグはそういう気分じゃないでしょ?」
と隼遊は返した。しかし、唯凪の伝えたい趣旨はそうではなかった。
「そうだけど…感じちゃうから眠れないの」
「もう…敏感なんだから」
しぶしぶ離れようとする隼遊のパジャマの裾を、唯凪はしっかりと掴んだ。
「…遠くに行きすぎ」
わがままな唯凪のお願いに、隼遊は笑みをこぼしながら
「じゃあどこまで行けばいいの?」
と、少しずつ近寄った。
「隣…来てよ」
「わかった…この辺まで来ればいいのかな?」
「うん…」
向き合って寝転ぶと、そっと両手を繋いで。
「…眠れそう?」
「もう大丈夫…」
静かにうなずく唯凪が目を閉じるのを見届けてから、隼遊も眠りについた。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!