ロストウォーリア長編 蒼杏/告白1 蒼月といると、心拍が増え顔も真っ赤に染まる。頭の中もずっと蒼月のことばっかだ。 思い返せば、今は亡き妻と出会ったときもこんな感じで…。 ―だ、だめだ!相手が誰だかわかってんのか、俺! 出会ってからまだひと月も経っていない同性に、こんな感情を抱いてはいけないとわかっているはずなのに…。 もう二人で出掛けるのも三度目、今日は子供を親戚に預けていつもより遠くに行くことになった。 普段は名知市周辺で済ますことが多いが、今俺たちがいるのは隣の豊田小牧市。俺も行ったことはない。 「すっげぇ自然だな…」 豊田小牧は決して大都会ではないが、豊かな緑と清流、そして古き良き町並みで、観光客にも人気だ。今日もたくさんの人でにぎわっている。 しばらく市内を散策していると、 「あの…杏寧さんですか?」 知らない女性が声をかけてきた。だがもう慣れている。 「え、はい…そうですけど」 蒼月から離れたことで平常心を取り戻し、余裕のある笑みを浮かべる。 「あの…ずっとファンでした!よかったら写真とか…」 「大丈夫ですよ!」 「ありがとうございます…!」 蒼月の視線を感じて、俺の鼓動は少し駆け足になる。 その女性は綺麗な人だ。普段の俺から見ればかなり好みだが、やはり蒼月には劣ってしまう。今の俺なら、どんな女性より蒼月のことが…。 とりあえず写真を撮ってあげて、手を振りながら見送る。 直後、蒼月の顔が見えたせいで、いつもより対応雑だったかな…なんて考える暇がなくて。 「…杏寧、長い」 ずっと待ってくれていた蒼月がそう呟いた。 嫉妬…なわけないよね。俺の何に嫉妬するのか…。 「ごめん、早く行こう?」 「わかった…」 町を見て回っていると、知らない間にもう夕方だ。 鮮やかな橙を見上げながら、蒼月はこう言った。 「実はさ…夜になったら連れていきたいところがあるんだ」 「えっ…?」 「ちょっと肌寒いけど…すっごく綺麗な夜空が見えるんだよ…」 夢中で語りだす蒼月の横顔に目が惹き付けられる。 「それでさ、天気が悪いと全然見えないんだよ…たぶん、今日は大丈夫だけど」 「…行きたい!」 本当は蒼月と一緒ならどこでもいいんだよ…。そう言いたかったけど、照れてしまい言えなかった。 「本当!?じゃあ…ついてきてくれ!」 [*前へ][次へ#] |