ロストウォーリア長編 蒼杏/馴れ初め2(モブ要素有り) あの事件があって数日、俺はいつものように電車に揺られている。 名知市のはずれからこの富士区役所に通勤しているため、電車や地下鉄を何度か乗り継がなくてはならない。 ここから3つほど先の駅で降りるため、準備をしようとしていると…。 「やめろ…離せっくそが!」 なにやら争っている声が聞こえた。しかも、どこかで聞いたような…。 「俺のこと何も知らねぇくせに付きまとうんじゃねぇ!」 「知っているさ…何だって調べているよ…」 俺が考えている間にも、争いはヒートアップしていく。 まずは行かなければ…。急いで声のもとに向かうと、そこには数日前に助けてくれた恩人がいた。 ―見知らぬ中年男とともに。 「おい、離せっ…んぁ、やめろ…」 壁に追いやられて腕をまとめられ、身体を弄ばれている。 必死で抵抗するも快感には抗えないようで。 「気持ちいいだろう?」 「はぁっ…全然…良く、ないっ…!」 「こんなに敏感になっているよ…ほら、ここもきつそうだ」 「嫌だ、やめろ、あぁっ…い、イっひゃ、あんっ…」 中年男の責めはどんどんエスカレートしていく。 それに反応する癖毛の恩人も気に入らない。 何とかして止めなければ…! 「おじさんも…気持ちいいか?」 「うわぁ!?」 気づかれないように近づき、そっと中年男の耳元で囁く。 すると、容易く中年男は崩れ、恩人は解放される。 面白い…こいつの弱点は耳か。 もう一度中年男に近づき、 「今度は俺が貴方を絶頂させてあげましょうか?」 なんて小声で言うと、そいつはすぐに逃げていった。 そして、座り込んでいる恩人を立ち上がらせる。足に力が入らず苦戦する姿に煽られるものがあった。 「あの…ありがとうございました…」 こちらに微笑みを見せる彼はとても妖艶であった。 それは先ほどまでの行為のせいか、それとも…。 「お恥ずかしいところをお見せしてすみません…」 謝るところもとてつもなく愛らしい。 こいつとならめちゃめちゃになるまで繋がれる…親しくもないのに失礼だろうが、俺はそう思った。 「いえいえ、先日の借りを返したまでですから…」 「あ、あの…よかったら、今度一緒にどこか行きませんか?」 「えっ…いいんですか!?」 あまりの急展開に、俺の胸は高鳴った。 「二度も会って、助けていただいて…俺はとても嬉しいから…」 目を逸らして言う彼が愛おしい。 「あ、ありがとうございます!是非!」 彼は照れたような笑みを見せる。それと同時に脈が早くなる。 きっと俺も真っ赤な顔してるんだろうな…。恥ずかしい。 「あの、連絡先は…」 「このアプリで大丈夫ですか?」 「はい!」 二人の仲は、まだ二回しか会っていないとは思えないほどに縮まっていった。 「あの、俺ここの駅で降りるんですよ」 「俺もです!よかったら途中まで一緒に…」 [*前へ][次へ#] |