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ガンダム00小説
家族
ロクスメ←刹

「家族」


「ミス・スメラギ。」


食堂に入ってきたロックオンはスメラギに声をかけた。スメラギとともに朝食をとっていたクリスティナは少し口元を歪める。
それもそのはず。
二人は隠しているつもりなのだが、トレミーのメンバー内や、マイスターズは気付きはじめていた。この二人が付き合っていることを。
最初はほんの小さな噂話にすぎなかった。誰かがホラを吹いたような。最近二人っきりで出かけたりするようになった……もしかして?という年頃のもの達の小さな噂だったのだ。が、次第に噂は広がり、根や葉がついてきた。
そして……二人が付き合っているということが明白になったのはアレルヤがたまたま見てしまったのだった。
二人が酒に酔い、頬を微かに赤く染めながら、唇を交わすその時を――。
間違いない。いくら酔っていたとはいえ、ずっと寄り添い合っていたのだ。
愛するもの同士のキスは短い一瞬のものでも、甘くて濃厚なのだろうか?
好きな者にしかわからないような――
ああ、ん……
はっきりいってうらやましい。
きっと今、ロックオンがスメラギに声をかけたのはデートか何かの誘いかもしれない。


「デュナメスの戦闘データをまとめたから、後で目を通しといてくれ。」


とかなんとかいって。


「えぇ、わかったわ。ありがと。」
「じゃ、また後でな。」
「ええ。」


ロックオンは自分を見ているクリスティナに軽くウインクをすると、食堂を出ていった。
あークソ。フリーに良い男ってなかなかいない。あのウインク可愛すぎる。
などと一瞬のうちに色々な事を考えていたクリスティナはにんまりと笑みをこぼしスメラギをつついた。


「スメラギさん。彼からデートのお誘いですか?」
「違うわよ」


するとスメラギは動じずに、鼻で笑って答えた。
てっきり恥ずかしがるかと思ったのだが、平常心保っている。


「彼言ってたでしょ?デュナメスの戦闘データを……」
「とかなんとか言って〜実は内容違うんじゃないんですか?デュナメスの戦闘データもありつつ……今夜のデートの待ち合わせ場所がかいてあったりして〜」


クリスティナが茶化すとスメラギは焼酎の入ったお猪口を手にし、酒を飲む。
ちっちっちっ、と人差し指を左右に振り、口を開いた。


「そんなことしたら、もし彼がホントに彼氏でも許さないわよ。」
「スメラギさん容赦ないですね。いいなぁ〜私もほしーな彼氏……」
「リヒティは?」
「う〜ん……なんか違うのよね。頼りないっていうか……。」
「うん……わからなくもないわね。」
「ですよね。見た目はいいんだけどなぁ。」
「見た目で決めたらダメよ。多少不細工でもいいの、中身が重要なのよ。」
「刹那は幼いし、ティエリアは意地悪そうだし……あ、アレルヤは優しいですよね。外見もいいし。」
「いいとこついたわね。彼はなかなかよ。でもあなた自身も支えてあげなきゃ。彼はすぐ落ち込んじゃうわ。」
「リヒティよりいいです♪私これからアレルヤにアタックしていきますね。」


スメラギはがんばれ、と応援する。その後もキャッキャッと話していた。
そしてその向こうにいるリヒティとラッセ。


「きこえてるんですけどね……」
「同情するぜ。」


スメラギとクリスとは違い、さっきから悲しい会話を繰り広げるリヒティあ〜んどラッセ。
思えば何回リヒティに同情しているのだろう?

スメラギは自室で、ロックオンから授かったデュナメスの戦闘データに目を通していた。


「損傷率……13%……、高い。高すぎるわ。」


後方支援を担当するのがデュナメスであり、前衛であるエクシアやキュリオスよりも損傷率が低いデュナメス。ヴァーチェは後方だが、チャージによる隙があるため、エクシアとあまり変わらない損傷率である。
問題はデュナメスだ。戦闘データを見るかぎり、後方支援のわりには損傷率が高い。
デュナメスの場合は流れ弾に当たってしまうか、接近してくる敵に対応するため、スナイパーライフルからビームサーベルに持ちかえるその瞬間に攻撃されてしまうか……のため、損傷率は低いはず。
なのになぜこんな損傷率が高いのか……?
パイロットであるロックオンが他の機体を庇うからだ。他の3機は予定していた損傷率より低く帰還してくるのだ。その代わり、デュナメスの損傷率が予定より高い。
正直……スメラギは悩んでいた。
周りが言うとおり、スメラギとロックオンは付き合っている。だからこそ、時には彼を出撃させたくない気持ちもあるのだ。
怪我をさせたくないから……というのも一つの理由だが、やはり一番の理由がある。
自分のそばにいてほしい。
彼は自分の弱い心に優しさを的中させる。乙女心を撃ち抜く――ロックオンは敵を撃つためだけのスナイパーではない。
どんなに複雑な乙女心でも簡単に撃ち抜いてしまうのだ。そして淋しくさせないよういつも気遣い、そばにいて優しくしてくれる。
時には怒るが、それは自分を過った道から外してくれるため。
その割りには心配させるようなことばかりだ。いつだってズルいのだ彼は。
あんな……自分のことでいっぱいなはずなのに。


「どうしたよミス・スメラギ。この間の戦闘にご不満があるってか?」
「、ロックオン……」


彼だけだ。ノックしないで中に入れてあげられるのは。
疲れた様子もなく、飄々としながら話し掛けてくるロックオン。
手袋を外した手がスメラギの肩に触れる。その一部分だけが暖かい。


「浮かない顔してどうしたんだよ?」
「あなたの戦闘データの素晴らしさに感動したのよ。」
「ほんとかよ?」
「嘘……損傷率が少し高いから、もう少し気を付けて。」
「了〜解」


わかってくれたのだろうか?
でもこうしてくれるだけで不安がなくなるのは、すごい……
すると、刹那がドアの前にいた。エクシアの戦闘データを提出してきたらしいが、ムスッとした表情でいた。


「なんだよ、どうした?」
「……」


ロックオンが声をかけると余計に不機嫌になる。


「せっつなー」
「……」
「刹那くーん?」


一向に返事がない。
刹那はじっとロックオンを見ていた。睨んでいるのではない。
なんというか……
迷子になってどうしようかと泣きそうになっている子供みたいだ。
こいつは弱いときはボロボロと崩れるからな。


「……」
「なんだなんだー?黙り込んでるだけじゃわかんねーって。」
「ロックオン、わかったわ。」
「?」


スメラギは刹那に近寄る。


「ロックオンが私にばかりかまうから、寂しくなっちゃったのよね?」
「……」


こくりと頷く刹那。
ロックオンとスメラギは向き合って苦笑しつつ、手をつないだ。
そして刹那の手を二人で握ってやる。


「これでいいだろ?」
「寂しくないわね。」
「……あぁ……」


小さく微笑む刹那。


「……家族みたいね。私が母親、ロックオンが父親で、刹那が二人のこども……」
「あぁ、いいかもな」


そう、これがいいのだ。
一番いいのだ。



END

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あきゅろす。
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