紅葉こいき/もみじこいき/短編 Episode1 戦った理由 僕は戦地に立った。 だって―― Episode1 戦った理由 いつも通り先陣のテントで眩しい朝日を見て、顔を洗った。水に映る自分の顔は隈が酷いし、やつれている。お世辞にも、美しいとも綺麗などとも賞賛の言葉が出てこない。 疲れている。ただ、それだけが浮かぶ顔だ。 当たり前だ。敵襲に備えてここ最近は殆ど寝ていない。こんな酷い顔、あまり他人に見せるような物ではない。 ただ、ここにいる人達も、あまり変わり映えしないが。 僕達は、戦争をしている。戦争を、し続けている。 勿論、それには理由があるし、僕らはそれに従って生きている。 もう、感覚が麻痺している。僕は人殺しの兵器だ。 毎日毎日人を殺す。それでも、毎日毎日人はやってくる。 どうして、終わらないのだろうか。どうして、人はこんなにも沢山戦争に向かうのだろうか。そして、僕はどうして、こんなに人を殺さねばならないのだろうか。 答えは出ない。出したくもない。 生きて、生き抜く為だ。 最初から答えなんて出ている。 そうして、国の為に貢献するから。 あの君主の為に、貢献するから。 僕は戦わねばならないのだ。 嗚呼、僕は行かねばならない。 死ぬ事は許されない。 死ねば楽になるというのに。 僕にはやり残した事が多すぎる。 人間でありたい。 人間であれば、生きていける。 人殺しでも、僕は人間だ。 生きて、生き抜く人間なのだ。 だから、僕は今日も戦わねばならないのだけれども。 [*前へ][次へ#] [戻る] |