「おかあ…さ、ん。」
怯えたような亜莉子の目に私がうつる。
「―――…あの、ね。」
あのひとによく似た綺麗な瞳、嫌、止めて、
「――お…か」
見ないでと叫んだ。同時に痺れる右手。
あぁ、あぁ、私はまた。
亜莉子の左頬が痛々しく腫れ上がっている。
大変、早く冷やさなくちゃ
「ごめんなさい」
、なに、
どうして泣くの亜莉子。
頬が痛いの、それとも昨日踏みつけた腕?
もしかしたら一昨日ねじ曲げてから治らない足が壊死してしまったのかしら?
「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
どうして謝るの?
何に対して謝っているの?
ねぇ、その謝罪は
「おどうざんのごとは…もういわないがらぁ…っ!」
まぁ、亜莉子の顔がひしゃげてしまっているじゃない
あら?私の手も真っ赤ね
亜莉子、亜莉子
かわいそうに、苦しいのね。
血が喉に詰まってしまったの?
ああ、そうよ、上手に吐けたわね。
ふふ、まるで慣れているみたい、なんて
どうして思うのかしら。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
どうして謝るの?
何に対して謝っているの?
どうして私は、拳を握りしめて
あのひとが守った愛しい子に向けて
振り下ろしているのかしら?
ねぇ、可愛い可愛い人殺し
あなたがあのひとをころしたのよ。
剥奪
わたしにはあのひとしかいなかったのに!
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