「いい天気ね」
雨粒が窓を叩く音のみが響く真っ暗な教室で、少女は彼女に言った。
くすくすと笑う度に少女の長い黒髪が揺れる。
対して彼女は、怪訝そうに「こんなにひどい雨なのに」と言った。
そこには些か疑問の響きもある。
少女はその疑問に答えるかのように笑った。
「だからよ。たくさん降ってるから、」
「全部濡れちゃうじゃない」
少女の言葉を遮って彼女が不満気に言えば、少女は小首を傾げる。
「亜莉子は、濡れるの嫌い?」
少女が問うと亜莉子と呼ばれた彼女は苦笑した。
「私は嫌いだけど…雪乃はすきなの?」
亜莉子の問いに、雪乃と呼ばれた少女は満面の笑みで返す。
「私にとって、雨は特別なのよ」
亜莉子が聞き返す前に、雪乃は帰ろうかと笑った。
踊る兎と
少女の涙
(ねえアリス、もっと泣いて)
(僕が必要だって泣き叫んで!)
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