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dust
たあ
・夢の続き


「…ま、…さま…!」


頭上から降る声は、やはり聞き覚えのあるものだ。
けれど少女のものではないそれに、未だ多少違和感を覚える。


「神様!」


覚醒を促す声に目を開ける。
眩しい光が瞳に痛かったのでもう一度目を瞑った。


「もう!
 まったく…寝坊助なんですから!」


ほら二度寝しない!と声を張り上げるのは
さらさらと流れる、男児にしては長めの黒髪を持つ十代半ばの少年。
髪と同じ色の瞳は休むことなくあちこちへと動き、忙しない。


少年の名は、遥。遥と書いてはるかと読むらしい。
いつだったか、人柱として土に埋められようとしていたところを貰い受けたのだ。

気紛れに拾ったものの、よく働く上くるくると動く表情が思いの外愛らしく
自分でも随分な気に入り様だと思う程可愛がっている。


「何ぼーっとしてるんですか?
 さ、朝ご飯食べ―……」


いつもへらへら笑っている私が黙ってじっとしているのを不思議に思ったのか、
遥は私の顔を覗き込んだ。


「どうかしましたか?どこか具合でも?」

否定しようとしたが、曖昧な笑みを浮かべるのが精一杯だった。
やはり慣れないことはするものではない。
いつも通り、そっと目を閉じて適当に思案していれば良かったのだ。
要らぬ睡眠などとるから、あんな、


「怖い夢でも、見たんですか?」


遥の問いに、夢、と呟く。

そう、あれはただの夢だ。
どうしたってもう彼女はいないのだから。


「…いいや」


いつものように笑って、遥を思い切り抱きしめてやった。
驚く遥に、してやったりと思いながら、
幸せな夢を見たよ、と囁く。


「一世一代の愛の告白を受けたんだ!」


いいでしょう、とまた笑えば、遥も笑った。


忘れられた神様の
穏やかな
こうして始まる


(なら今日は、仕事増やしても良いですね)
(それとこれとは話が別だよ)


あきゅろす。
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