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dust
たあ

目を覚ますと
僕の目の前で少女が独り、泣いていた。

僕は少女が誰なのかも
僕が誰なのかも分からない。


(このこは、知っているのだろうか…)


ふと思った僕は、聞いてみることにした。

僕が誰か知っているの?
―――そうなのかい

でも、君が誰かは知っているだろう
―――そうなのかい


少女は僕が誰なのかも、自身が誰なのかも分からないそうだった。

もう少女に聞くべきことはなかったので僕は黙る。
しかし少女は泣き続けた。


ずっとずっとずっと、それこそ泣き声を聞いている僕の気がおかしくなるんじゃないかと思う程に少女は泣く。

だから僕は、また聞いてみた。


君は泣くことしかしないね
―――そうなのかい

じゃあ僕が今度目覚めたら
笑ってる君が見たいな


少女は腫れた目でふんわりと微笑んで、唇を動かしたけれど
僕はその声を聞くことなく、突如として重くなった目蓋を閉じた。



君はいつも笑っているね
―――そうなのかい

じゃあ僕が今度目覚めたら
僕の隣で永遠に眠る君が見たいな


そう言ったら
彼女は笑うのを止めて顔を伏せた

初めて 笑顔以外の顔を見、

…違う?

初めて  じゃ
   ない    気   が


(あ、)


睡魔に負ける瞬間
少女は


「あなたが覚えてないだけよ」


そう言って紅を散らせた

ずいぶん昔にも

見た

    光景


眩惑


そして目覚めた僕は傲慢にも、
君の目覚めを願うのだろう


あきゅろす。
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