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夢で逢えたら(短編)
真夜中のティー・パーティー@
「勝手にしろ・・・っ」
独りになった事を確認してから、声を荒げた。

こんな姿を彼女には見せられない。
冷静でいて突き放したような先程の自分の対応と、今の本心剥き出しの態度を比べて、ヨザックはどちらの自分にも苛立ちをおぼえた。

乱暴な言葉を天井に投げつければ、それは自己嫌悪と後悔に形を変えて我が身に降りかかってくる。
ヨザックは溜め息をつくと、身体を覆うシーツを凪ぎ払った。

「何もあれくらいで機嫌損ねなくてもいーだろうが・・・」
言いながら起き上がりベッドに腰かける。
「まあ・・・オレが悪いんだけどな、たぶん」
床に落ちていた服をとり、身支度を整え始めた。

もうすぐ街に出なければならない。帰りはそう遅くはないだろう。
出ていった鞠花の機嫌を窺いに行きたい気もするが、こんなにも早くに白旗を揚げるのは釈然としない。

土産でも買って帰れば、すぐに仲直り出来るだろう。
頭の中で表情豊かな鞠花を思い浮かべ、自然と笑みがこぼれた。

「どうせすぐに戻るしな」
日帰りの仕事などは、彼の尺度だと大した時間ではないらしい。
気を取り直して準備を進め、足軽に部屋を出た。



―――・・・
「何よ、あれ!」
思い出し怒りをして、声を荒げた。

「何もあんなに怒らなくてもいいじゃない・・・」
胸中での呟きが自然と表に出ていたようで、その事に鞠花自身驚いてしまった。
「あっ・・・・・・」

「大丈夫、鞠花さん?」
少し心配そうに、困った表情で有利が声をかける。
「ああうん、全然平気。なんかごめんね、押し掛けちゃって」
慌てて手を振りながら、何でもないように笑顔を作った。

ここは有利の執務室。ヨザックと喧嘩したまま、宣言通りに足を運んだのだ。

『いいわよ、じゃあ好きにさせてもらうから!お望み通りゆーちゃんとコンラッドと、懐かし話に花を咲かせてくるからっ』

勢いに任せて言ってしまったが、その後こんなにもやもやとした不快感に苛まれるなんて。
こんな事なら、ちゃんと誤解をといてくれば良かった。

喧嘩の原因は些細な事。鞠花の『地球懐古話』だ。

この世界は慣れれば居心地もなかなか良いのだが、やはり高度文明が恋しい。
テレビも無ければ電話も無い。
口寂しくなればいつでも侍女が美味しい菓子を用意してくれるが、コンビニで新発売の菓子を手に取る楽しみは得る事が出来ない。
そんな思いを、どうやら頻繁に口にしていたのだ。

『オレと居るのがそんなにつまんねえなら、コンラッドと陛下のとこに行きゃあいいだろ!』

ヨザックから吐き出されたこの言葉を皮切りに、言い争いは口火を切った。


 何よ、ヨザックのバカ!誰が一緒に居てつまんないなんて言ったのよ?
 なのに、『権利がない』だなんて酷いよ・・・なんでそんな事言っちゃうかな・・・・・・。


彼が言った言葉と、それに対し自分が返した言葉を反芻する。
余計に気が滅入り俯いていると、背後に人の気配を感じた。

「大丈夫だよマリカ、すぐに仲直り出来るから」
「コンラッド」
振り向くと、穏やかな笑みを湛えたコンラッドが立っていた。

「それにしても・・・俺や陛下の所に行けだなんて、アイツも何にこだわってるんだか。
そのくせ出ていく先をちゃんと限定してるんだから、頭が良いというかなんというか・・・」
「限定ってどういう意味なんだ?」
首を傾げる有利になのか、それとも幼なじみの言動にか、コンラッドは小さく笑う。

「喧嘩したって、結局はマリカを目の届く所に置いていたいって事だ・・・」
「それだっ」

「え?」
突然鞠花の声に遮られ、コンラッドも有利も目を丸くする。
「あのね、二人にお願いがあるの!」
当の鞠花は、良いことを思い付いたといった顔で、やけに目を輝かせている。

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